2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K06443
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中西 祐輔 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (20579411)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 好中球 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス乳がん細胞株である4T1細胞株で誘導した腫瘍組織内には多量の好中球浸潤とそれらの好中球が細胞外トラップ(NETs)を放出するという現象が確認されている。このような現象は大腸がん細胞株であるCT26で誘導した腫瘍では見られなかった。また、4T1細胞株の培養上清を骨髄由来好中球と培養するとNETsの特徴であるヒストンH3のシトルリン化が観察された。 NETsが腫瘍形成に及ぼす影響を解明するため、NETsの誘導に必須の酵素PAD4の選択的阻害剤であるGSK484の投与を試みた。しかし、対照群と比較して腫瘍サイズに影響はなく、好中球の浸潤数にも差が認められなかった。このことから、GSK484の投与方法、投与ドーズに更なる検討が必要と考えられた。 一方、4T1細胞由来のNETs誘導因子に関して検討したところ、分子量が3KDa以下であるATPやポリアミンであるスペルミジンが候補因子として挙げられた。4T1細胞のATP放出量および含有量を測定したところ、NETsを誘導する能力が低い、CT26細胞株と同程度であったことから、NETs誘導因子はスペルミジンと想定し、培養上清中のスペルミジン量を定量したところ、4T1細胞の培養上清には高濃度のスペルミジンが含まれていた。試薬グレードのスペルミジンで骨髄由来好中球を刺激するとヒストンH3のシトルリン化が見られたことから、誘導因子はスペルミジンと考えられた。 実際、in vivoでスぺルミジン合成上流の酵素を阻害するとNETsの形成が阻害されていることが確認された。以上の結果から、4T1細胞で誘導した腫瘍内においては、スペルミジンがNETsを誘導することによって微小環境を構築していることが明らかとなった。今後、NETsおよびスペルミジン合成の両面から、微小環境の変化を誘導し腫瘍形成を阻害する方法を検討していく必要がある。
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