2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞骨格の再構築による細胞分化および脱分化機構の解明
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19K06444
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加野 浩一郎 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80271039)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 卵胞顆粒層細胞 / 細胞接着 / 細胞形態 / 網羅的遺伝子発現解析 / 脱分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、体外培養した分化細胞の脱分化および多能性獲得過程における遺伝子発現の変化を明らかにする目的で行った。ブタ卵胞から単離した卵胞顆粒層細胞(pGC)を培養し、0、6、12、18および24時間後に細胞形態を観察するとともに、全RNAを採取して網羅的遺伝子発現解析を行った。 1)体外培養したpGCの細胞形態の変化:培養6時間後、pGCの約60%が培養皿底面に付着した。培養12時間後には、ほとんどのpGCが培養皿底面に付着し、一部では細胞が伸展した。培養18および24時間後になると細胞が伸長し、線維芽細胞様の形態を示すpGCが観察された。2)体外培養したpGCの遺伝子発現の変化:培養0、6、12、18および24時間後のpGCの遺伝子発現状況をマイクロアレイ解析して調べた結果、遺伝子発現プロファイルは培養0時間後からpGCが培養皿の底面に付着した培養6時間後において著しく変化し、その後は培養時間の経過に伴って培養24時間後の遺伝子発現プロファイルに類似した遺伝子発現状況へと移行した。3)pGC特異的遺伝子の発現解析:培養0、6、12、18および24時間後のpGC特異的遺伝子の発現状況をマイクロアレイ解析して調べた結果、培養0時間後ではpGC特異的遺伝子であるアロマターゼ遺伝子の発現は高い値を示したが、pGCが培養皿の底面に付着した培養6時間後に著しく低下した。その後、培養時間の経過に伴ってアロマターゼ遺伝子の発現は低下し、培養24時間後には発現が認められなくなった。 以上の結果から、pGCは培養皿に付着することによって脱分化を開始し、その後培養時間の経過に伴う細胞形態の変化によって、培養24時間後までに脱分化することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ブタ卵胞顆粒層細胞(pGC)の脱分化が開始し、その後において完了するタイミングを調べることによって、脱分化および多能性獲得のメカニズムの詳細を明らかにするための培養系の確立を主な目的とした。その結果、pGCは培養6時間後に培養皿に付着することによって脱分化が開始されること、その後の細胞形態の変化に伴って培養24時間後にはpGC特異的遺伝子であるアロマターゼの発現が認められなくなることから、pGCは短時間に脱分化することを見出した。また、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析の結果、3回の実験によるバラツキがほとんど認められなかったことから、pGCは同期的に接着し、脱分化することが示された。これらのことから、pGCの脱分化を精密に調べる培養系を確立することができたと考えられる。しかし、当初の計画では、マイクロアレイ解析によって接着および細胞形態の変化にかかわる遺伝子の変化および多能性にかかわる遺伝子の探索を行うこと、またその解析結果を基にして接着班の形成およびアクチンファイバー形成のタイミングを蛍光免疫染色して調べることまでを予定していたが実施できなかった。これらについては、次年度に実施することにする。 以上のように、pGCを調べるための精密に調べる培養系を確立したことは、脱分化および多能性獲得のメカニズムを解明する有力な手段となることから、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に体外培養したブタ卵胞顆粒層細胞(pGC)から取得した遺伝子発現プロファイルを用いて、接着班および細胞骨格など細胞形態の変化にかかわる遺伝子群およびpGC特異的遺伝子および幹細胞および種々の分化細胞における初期分化マーカー遺伝子の発現状況について調べる。網羅的な遺伝子発現解析の結果を基にして、接着班やアクチンファイバーなど細胞骨格の形成のタイミングを蛍光免疫染色法を用いて明らかにする。また、インテグリン-接着班-アクチンファイバー-MKL1に至るシグナル伝達経路を阻害することによって、脱分化および多能性獲得に及ぼす影響を明らかにすることを予定している。
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Research Products
(1 results)