2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞骨格の再構築による細胞分化および脱分化機構の解明
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19K06444
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加野 浩一郎 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80271039)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脱分化 / 細胞骨格 / アクチンストレスファイバー / Gアクチン / Fアクチン / 卵胞顆粒層細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブタ卵胞顆粒層細胞 (GC) の脱分化に及ぼすアクチン細胞骨格形成の影響 令和元年度において、GCは培養6時間後に細胞の接着に伴って脱分化することが示された。体細胞が培養皿の底面に接着すると、その刺激によってアクチンストレスファイバーが形成され、それによって細胞形態が変化することが知られている。また、我々はアクチンストレスファイバーの形成が細胞の遺伝子発現を直接的に制御することを明らかにしている(Nat Commun 2014)。本年度では、アクチンストレスファイバーの形成が脱分化を惹起するかについて明らかにする目的で、アクチンストレスファイバーの形成阻害がGC特異的機能であるアロマターゼの発現に及ぼす影響を調べた。 直径4~6mmの卵胞からGCを採取したのち、20%FBS添加DMEMに細胞骨格アクチン重合阻害剤であるLatrunculin Aを添加し、7日間培養した。シート状のGC、単離したGC、培養1、2、4および7日後に定法に従って全タンパク質およびRNAを抽出し、WBおよびPCRによりアロマターゼの発現状況を調べた。また、GアクチンおよびFアクチンの定量は、超高速遠心分離して取得した画分をWBで測定した。 GCは培養6時間後に培養皿へ接着した。一部の細胞では接着班およびアクチンファイバーが観察された。また、培養時間の経過に伴ってFアクチンの量が増加した。GC特異的機能であるアロマターゼの発現を調べた結果、培養6時間後からに大きく減少し、培養24時間後では発現が消失した。一方、Latrunculin Aを添加すると、多くのGCにおいて球状の細胞形態が維持され、それらの細胞にFアクチンの形成は観察されなかった。また、アロマターゼの発現も維持された。以上の結果から、GCの脱分化は培養6時間以後の細胞接着に伴うアクチン細胞骨格形成によって惹起されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、ブタ卵胞顆粒層細胞(GC)の脱分化に及ぼす細胞骨格形成の影響を明らかにする目的で、細部骨格アクチン重合阻害剤を用いて行った。その結果、GCの脱分化は培養6時間以後の細胞接着に伴うアクチン細胞骨格形成によって惹起されることを明らかにすることができた。しかし、新型コロナ感染症の流行によって研究室の使用が長期間に渡って制限されたために、GCの脱分化のタイミングと脱分化したGCが多能性を獲得する時期を明らかにし、脱分化および多能性獲得する時期において発現変化する遺伝子を網羅的に解析を終えることができなかった。これについては、次年度に実施することにする。以上のように予定した研究計画の50%ほどが実施できなかったことから、進捗状況としては「やや遅れていると」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ブタ卵胞顆粒層細胞(GC)の脱分化のタイミングと脱分化したGCが多能性を獲得する時期を明らかにし、脱分化および多能性獲得する時期において発現変化する遺伝子を網羅的に解析し、多能性に関与すると推定される遺伝子を抽出することを行う。実験が順調に進展すれば、抽出した遺伝子を単独あるいは組み合わせてノックアウトし、脱分化したGCの多能性に及ぼす影響を調べる。
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Research Products
(4 results)