2019 Fiscal Year Research-status Report
IG-DMR母方欠失マウスにおいて周産期致死を引き起こす責任配列の探索
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19K06451
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
原 聡史 佐賀大学, 医学部, 助教 (80739582)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲノムインプリンティング / Dlk1-Dio3ドメイン / IG-DMR / ゲノム編集 / 2細胞期インジェクション |
Outline of Annual Research Achievements |
Dlk1-Dio3領域のインプリント遺伝子群を制御するIG-DMRは、哺乳類の正常な発生に重要である。約8.9 kbにわたるIG-DMRのうち、4.1 kbを欠失したアレルを母由来で遺伝すると周産期致死を示すことから、この内部に母方アレルにおける遺伝子発現制御に重要な領域が存在することが示唆される。本研究ではこの領域を同定するため、ゲノム編集によって欠失マウスを作出し、表現型によるスクリーニングを行う。 最初に、予備実験で得られた結果を精査した。その結果、2.7 kb領域の欠失を母由来で遺伝したマウスは胎生16.5日ごろから胎生致死を示し、下流のインプリント遺伝子Dlk1の発現上昇およびGtl2の発現抑制が認められた。また、胎盤の構造や重量に野生型との顕著な差は認められなかった。これらのことから、2.7 kbを欠失したマウスの表現型は過去の4.1 kbを欠失した報告と同様であることが確かめられた。この2.7 kbの内部をさらに3領域に分け、それぞれにsgRNAを設計し、欠失マウスを作出した。 一方、欠失マウス作出の過程で、ファウンダーマウスを得られる効率が他の領域に比べ低いことがわかった。これは、IG-DMR内部には母方アレルだけでなく父方アレルにおいても欠失すると胎生致死となる領域が存在し、いずれのアレルが欠失しても致死となるリスクを伴うことによる。そこで2細胞期胚の割球にインジェクションを行うことで人為的にモザイク胚を作出し、致死性のレスキューを試みた。その結果、前核期にインジェクションした場合に比べて出生率が有意に改善した。また、この方法はノックインマウス作出にも適用できた。得られたファウンダーマウスを野生型と交配させたところ、変異アレルを持つ細胞の寄与率と同程度の効率で次世代へ伝達することが可能であった。以上の成果を論文としてまとめ、発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は表現型および発現解析から得られた結果をもとにして、候補領域をさらに絞り込んだ欠失マウスの系統を複数作出することに成功した。次年度以降、表現型の解析を行っていく。その過程で、sgRNA/Cas9をインジェクションしたマウスでIG-DMR欠失による胎生致死が多く認められた。これを改善するため、2細胞期胚にインジェクションを行うことで効率よくファウンダーを得られる手法を確立し、今後の基盤とすることができた。以上のことから、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画にもとづき、作出した部分欠失マウスの表現型およびインプリント遺伝子の発現解析を行う。また、DNAメチル化状態に関しても解析を開始する。なお申請者が今年度から職場を移動したため、マウスの維持やサンプルのやりとりに関して緊密に連携を取りながら実施する。
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Causes of Carryover |
申請者が予定していたPCの購入を見送ったこと、想定していたよりも効率よく欠失マウスの作出および解析を行うことができたことにより生じた。次年度以降のマウス作出および試薬・消耗品類に充てる。
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