2019 Fiscal Year Research-status Report
臓器特異的遺伝子編集によるRasドライバー発癌制御遺伝子座解析系の実証的構築
Project/Area Number |
19K06456
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
鈴木 昇 三重大学, 地域イノベーション推進機構, 准教授 (00202135)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 肺癌モデル動物 / Ras / QTL解析 / 遺伝子編集 / Cas9 / スピードコンジェニック法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト肺癌の約10-20%にはRas遺伝子の活性化変異が認められ、Ras遺伝子活性化変異が発癌の直接の原因と考えれれている。 私たちは、独自にマウスの系統間にRas遺伝子活性化変異に異なる感受性を示して肺発癌する動物モデル系を樹立して、2系統間で量的遺伝子座(QTL)解析を進めてきた。その結果、肺発癌を制御する15の遺伝子座を新たに見出し、責任遺伝子として72遺伝子を候補した。 令和元年度は、まず、in vivo解析で使用する動物数の減少に努めるため、in vitroで肺癌細胞の増殖への影響を調べた。具体的には、高発癌感受性系統に、Cre発現アデノウイルスベクターを経気管感染し、肺胞上皮特異的に肺癌を誘導し、感染2か月後に、腫瘍を初代培養して細胞株(KRMLT-1, -2)を樹立した。72の候補遺伝子のうち、データーベース上で、腫瘍細胞で発現の増強が認められる上位17遺伝子について、RNA干渉によるKRMLT-1の増殖への影響を、MMTアッセイによって調べた。その結果、8遺伝子について、有意な増殖抑制効果を認めた。並行して、恒常的にターゲット遺伝子特異的gRNAとCre遺伝子を発現可能な汎用レンチウイルスベクター(pl-gRNA-Cre)を作製した。 さらに、遺伝子編集を応用して、in vivoで肺特異的に発癌試験を実施するため、新たな系統B6-Ryr2tm1Nobs ;CAS9マウスを作製に着手した。具体的には、高発癌感受性系統B6-Ryr2tm1Nobsマウス(C57BL/6J背景)と全身でCAS9発現するROSA-CAS9マウス(C57BL/6N背景)を交配し、スピードコンジェニック法により、B6-Ryr2tm1Nobs ;CAS9マウス系統(C57BL/6J背景)を樹立を開始した。令和元年度は、4代まで進んだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vivo解析で使用する動物数の減少させるためには、72の候補遺伝子をさらに絞り込む必要がある。そのため、データーベース上で、腫瘍細胞特異的に発現が認められた既報の遺伝子で発現増強度の高い上位17の絞り込み、さらにRNA干渉によって細胞増殖に関与する機能側面を調べた結果、抑制効果を認めた8遺伝子に限定することができた。これは研究の進展にとって大きな成果である。In vitroアッセイ系の要である肺癌細胞株の樹立も滞りなくできた。次年度以降に必要なin vivo系で必要なウィルスベクターの構築も終了したが、感染と遺伝子組み換えに問題なく機能するかについては、検討中である。sgRNA導入後の遺伝子編集の有無を指標にして、まずはin vitroにての機能を調べなければならない課題を残した。In vivo解析に必須である動物の遺伝背景の統一についてはスピードコンジェニック法による交配が順調に進んだ。
|
Strategy for Future Research Activity |
効率的かつ最小限の動物を使用したin vivoで解析をするために絞り込んだ8遺伝子について解析を進める。それぞれについて感染用のウィルスベクターを構築し、in vitroで機能試験を行った後、in vivo試験へ移行する予定である。各5匹に経気管感染(2×10の6乗 pfU)させ、8週後に肺を摘出し腫瘍数を比較する。pl-sgRNA-Creウイルスが感染した細胞では、Creタンパクの働きによる癌型K-ras遺伝子の発現と同時に標的遺伝子ノックアウトが起こる。そのため、評価対象の遺伝子が発癌感受性に抑制的な遺伝子であれば腫瘍数は増加し、逆に、促進的な遺伝子であれば減少するため、候補遺伝子が特定される予定である。効果を認めた遺伝子については、原発腫瘍をマイクロアレイ等で発現解析を実施し、メカニズムの解析を実施する。
|