2020 Fiscal Year Research-status Report
アンドロゲンによる異物代謝酵素遺伝子の発現制御の解析:GHR-KOブタを用いて
Project/Area Number |
19K06463
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
小島 美咲 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, シニア特別研究員 (80355742)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
淵本 大一郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, グループ長補佐 (10343998)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | GHR-KOブタ / アンドロゲン / IGF1 / CYP2C33 / CYP4A / 薬物トランスポーター / 肝臓 / 腎臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 5ヶ月齢の成長ホルモン受容体欠損(GR-KO)ブタ8頭 [ホモの雄3頭, 雌1頭:ヘテロの雄1頭, 雌2頭:野生型 (WT) の雌1頭]の肝臓と腎臓を用いて、アンドロゲンで正に制御されているCYP2C33の発現量をreal time RT-PCRで測定した。ホモとWT/ヘテロ間で差は認められず、GHRを介したGHシグナルは両臓器のCYP2C33の構成的発現には関与していないことが示唆された。また、GHで制御されているInsulin like growth factor 1 (IGF1) のホモ個体の肝臓におけるmRNA量と血中IGF1量はWT/ヘテロに比べて減少することを確認した。 2) 5ヶ月齢のMeishan (M)、Landrace (L)、テストステロン(T)を投与した5ヶ月齢の去勢雄や雌の肝臓と腎臓におけるCYP4A24/25の発現量をreal time RT-PCRで測定した。CYP4A24/25発現の性差およびT投与効果は両品種とも腎臓のみで認められ、TによるCYP4Aの発現制御には臓器選択的因子の関与が示唆された。 3) ブタの薬物トランスポーターの遺伝子発現を2)と同様にして測定した。OATP1B3, OCT1, MDR1の肝臓における発現はMのみで性差が認められ、OCT1では両品種ともにT投与効果が認められたが、OATP1B3, MDR1ではMのみで認められた。BCRP, MRP2, OAT2の肝臓での発現には両品種とも性差は認められなかった。腎臓でのOAT1, OCT2の発現はMのみで性差が認められ、OAT1では両品種ともにT投与効果が認められるが、OCT2ではLのみで認められた。以上より、OCT1とOAT1の発現はT依存的であるが、OATP1B3, MDR1, OCT2の発現にはT以外の因子の関与が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
成長ホルモン受容体欠損(GR-KO)ブタ、特にホモ個体の数が足りず、肝臓および腎臓における異物代謝酵素の構成的発現の解析が不十分となっている。また、十分なホモ個体を確保できないために、異物代謝酵素のテストステロン依存性発現にGHRが関与するか否かを明らかにするためのテストステロン投与実験はできなかった。このように、主目的であるGHR-KOブタでの知見をほとんど得ることができず、遅れているとした。 なお、順調な成果として、野生型のブタ品種を用いてトランスポーターの構成的発現や腎臓における異物代謝酵素の発現におけるアンドロゲンの関与について新たな知見が得ることができ、欧文学術誌に投稿できたことが挙げられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
GHR-KOブタの生産に使用している母豚と雄豚の発情周期や精子に異常は認められないことから引き続き交配を行い、解析に必要なGHR-KOブタの生産を行う。5ヶ月齢における異物代謝酵素等の構成的発現におけるGH/GHRの関与を明確にすることを優先し、十分なホモ個体が確保できた場合にはテストステロン投与群と未投与群に分け、異物代謝酵素や転写因子の発現変動を比較することで、テストステロン制御におけるGH/GHRの関与を解析する。テストステロン投与実験は1ヶ月齢のブタで行うことを予定していることから、野生型のブタ品種を使用して、既報の方法 (Biochem. Pharmacol., 75, 1076-1082, 2008)により、テストステロン投与による血中テストステロン濃度の変動とGHおよびIGF1濃度の変動との関連性を解析し、テストステロンによる肝臓や腎臓における異物代謝酵素等の発現変動にGHやIGF1が関与する可能性の有無を検討する。 マウスの成長ホルモン(GH)依存的な性差発現に関わるとされるSTAT5b, BCL6, CUX2の内、ブタのCUX2発現がアンドロゲンで制御されていることを見出しており、これまで明らかにしてきたアンドロゲン依存性に制御されている異物代謝酵素の遺伝子発現とCUX2遺伝子発現との関連性を解析するとともに、関連性が認められた遺伝子についてはその遺伝子上流域にCUX2の結合配列が存在するか否かを調べて、CUX2がアンドロゲン依存性の発現制御に関与する可能性を検討する。
|
Causes of Carryover |
GHR-KOブタの生産頭数が少なかったため予定していた解析ができなかったことから未使用額が生じた。未使用額については、血中生化学成分の委託解析、血中テストステロン濃度、血中IGF1やGH濃度などを測定するためのELISAキット、肝臓と腎臓における遺伝子発現解析関連の試薬等に使用する。また、本年度論文を投稿したことから、受理された場合の掲載費に使用する。
|