2019 Fiscal Year Research-status Report
痒み中枢細胞制御による目の痒み誘発および治療モデル動物の開発
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19K06475
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
高浪 景子 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (70578830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小出 剛 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 准教授 (20221955)
坂本 浩隆 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (20363971)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 結膜炎 / 痒み / 掻痒症 / モデル動物開発 / 種差 / ラット / マウス / 掻き行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境汚染やライフスタイルの変化により、多くの眼疾患の共通症状である結膜炎による目の掻痒症が増加している。この結膜炎による眼の痒みにより、眼を掻き擦り続けると、さらなる症状の悪化および難治性掻痒症となり、視力低下、白内障、網膜剥離等を導く。本研究では、眼の痒みの伝達回路を明らかにし、痒みにより掻き続けてしまう行動を抑制し、症状の悪化を防ぐことを目的とする。 本年度は、結膜炎掻痒症の評価法を確立するために、齧歯類を用いて結膜炎モデル動物の作製した。アレルギー性結膜炎では、ヒスタミン等の放出により、炎症および痒みが誘発されるため、まずWistar系統ラットにヒスタミンを点眼し、痒みにより誘発される行動を解析した。ヒスタミン投与群ではコントロール群に比べ、後肢による眼の掻き行動、前肢による眼の擦り行動、全身を震わせるwhole body shakesの3種類の行動の増加がみられた。また、ヒスタミンの連続投与による慢性化した結膜炎では、結膜部の炎症・浮腫、強膜部の著しい充血が惹起され、ラットにおいて、ヒトと類似の結膜炎症状がみられた。また、ヒスタミンによる眼の痒みの誘発時に活性化される脳領域を調べた結果、頸髄後角および下部延髄表層において、ヒスタミン投与側で神経活性が上昇していることが明らかとなった。同じモデル動物である齧歯類において、ラットとマウスでは痒みの閾値が異なる可能性があるため、C57BL/6系統マウスでも同様にヒスタミンの点眼を行い、行動解析を実施した。その結果、ラットと同様の痒み行動がみられたが、掻いた回数および掻いた持続時間やその行動発現パターンと時系列に違いがみられた。ここから、齧歯類における痒みの感受性に種差がみられることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は結膜炎モデル作製のため、齧歯類ラットを用いてヒスタミンの点眼と痒みに付随する行動解析を実施し、点眼濃度、点眼量、点眼期間、誘発される行動パターンの評価法を確立することができた。また、齧歯類マウスでは、ヒスタミン点眼による掻き行動パターンにラットと類似点および相違点がみられ、痒み感受性の種差が存在する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
眼の痒みを伝達する神経回路網の解析のため、眼の痒み誘発時に活性化される頸髄および下部延髄の神経細胞種の同定を行う。また、齧歯類における痒み閾値の種差のみでなく系統差を明らかにするために、多様な行動表出を行うことが知られている野生型由来マウス系統と一般的な実験系統であるC57BL/6系統との比較を行い、痒みの感受性の違いとそれに関わる遺伝子の探索を行う。
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Causes of Carryover |
遺伝子編集マウスの作製のデザインに時間がかかったため、次年度のコンストラクトの作製に使用する。
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