2020 Fiscal Year Research-status Report
痒み中枢細胞制御による目の痒み誘発および治療モデル動物の開発
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19K06475
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
高浪 景子 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (70578830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小出 剛 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 准教授 (20221955)
坂本 浩隆 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (20363971)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 結膜炎 / 痒み / 掻痒症 / 掻き行動 / ガストリン放出ペプチド受容体 / 遺伝子改変動物 / 標的細胞ノックアウト法 / モデル動物作製 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、眼の痒みを伝達する三叉神経知覚系における神経回路網の解析のため、眼の痒み誘発時に活性化される脳領域における神経細胞種の同定を行った。昨年度、ヒスタミンによる眼の痒み誘発時に、下部延髄表層および上部頸髄後角において、ヒスタミン投与側で神経活性が上昇していることが明らかとなった。このとき、頸髄における神経活性化マーカーc-Fosの発現パターンが、身体領域の痒みを中枢に伝達することが報告されたガストリン放出ペプチド(GRP)受容体の発現分布と似ていた。そのため、GRP受容体が眼の痒みを伝達する候補分子のひとつと考え、GRP受容体を発現する細胞に赤色蛍光タンパク質とヒトジフテリア毒素受容体を発現する形質を導入したGRP受容体遺伝子改変ラットを用いて、眼の痒み誘発時のGRP受容体発現細胞の活性化割合を調べた。その結果、ヒスタミン投与側の下部延髄および上部頸髄後角において、GRP受容体発現ニューロンにおけるc-Fos陽性率が有意に増加したことから、三叉神経知覚系において眼の痒み誘発時にGRP受容体発現ニューロンが活性化されることが示された。次に、GRP受容体発現ニューロンを介して眼の痒みが伝達されるかどうか行動レベルで明らかにするため、GRP受容体遺伝子改変ラットを用い、標的細胞ノックアウト(toxin receptor-mediated cell knockout)法を用い、延髄への毒素投与によるGRP受容体発現ニューロンの選択的破壊を行い、痒みによる掻き行動が変化するかどうか調べた。その結果、毒素投与によって延髄のGRP受容体発現ニューロン数が減少することが確認され、ヒスタミン投与時の後肢による掻き行動が有意に低下した。以上から、三叉神経知覚系において、眼の痒みの伝達にGRP受容体発現ニューロンが関与していることが今回示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は眼の痒みを伝達する三叉神経知覚系において、眼の痒み誘発時に活性化される脳領域におよび神経細胞種を解析するために、遺伝子改変ラットに標的細胞ノックアウト(toxin receptor-mediated cell knockout)法を用い、下部延髄および上部頸髄表層のGRP受容体発現細胞が眼の痒みの伝達を介することを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
齧歯類における痒み閾値の種差のみでなく系統差を明らかにするために、多様な行動表出を行うことが知られている野生型由来マウス系統と一般的な実験系統であるC57BL/6系統との比較を行い、痒みの感受性の違いとそれに関わる遺伝子の探索を行い、眼の痒みを解析する上で、より人の結膜炎症状を反映するモデル動物の作製を試みる。
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Causes of Carryover |
遺伝子改変マウスの作製に時間を要したため、引き続き次年度も遺伝子改変マウスの作製および維持に用いる。
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