2020 Fiscal Year Research-status Report
核内ストレス体の構成変動に着目したストレス応答機構の解明
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19K06478
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
二宮 賢介 大阪大学, 生命機能研究科, 特任講師(常勤) (00437279)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ストレス応答 / 長鎖非コードRNA / 核内構造体 / スプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
熱ストレス下の霊長類細胞核内に形成されるRNA蛋白質構造体、核内ストレス体(以下、nSB)の構成蛋白質の温度変化依存的・経時的変動に着目して、nSBの機能の解明を目指している。2020年度は、nSBの骨格RNAであるHSATIII 長鎖非コードRNA(lncRNARNA)が、熱ストレス回復期に特定のRNA修飾の基質となることで、RNA修飾因子群を核質から奪い他のRNAの修飾を阻害する「分子スポンジ」として機能することを見出し、その結果、少なくとも数十種の遺伝子についてRNA修飾依存的なpre-mRNAスプライシングを抑制していることを見出した。これまでに報告した通り、nSBはスプライシング必須因子であるSR蛋白質と、そのリン酸化酵素であるCLK1を濃縮して、熱ストレス回復期にリン酸化反応を促進する「るつぼ」として機能し、同様にストレス回復期にスプライシングを抑制することが分かっている。つまり、nSBは「分子スポンジ」としての機能と「るつぼ」としての機能を併せ持ち、機序の異なる2つの分子機構によってストレス回復期のスプライシングを効果的に制御していることが明らかになった。現在、この成果を論文投稿中である。 また、上記の二つの機能発現を担う温度変化依存的なnSBの構成変化について、分子メカニズムの解明を進めており、それらの制御を担う蛋白質の同定や、その蛋白質における必須ドメインの絞り込みを行っている。 上記の2つの機能に加えて、HSATIII lncRNAを足場とする第三の分子機構を見出し、その機能と細胞における役割についても、解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、nSBによるスプライシング制御の分子機構として、特定のSR蛋白質のリン酸化を促進する「るつぼ」の機能に加えて、RNA修飾因子を核質から奪い、RNA修飾依存的なpre-mRNAスプライシングを抑制する「分子スポンジ」の機能を見出した。それらの機能が熱ストレス回復期に働く仕組みについて、責任因子、および、その責任因子中の必須ドメインの探索を行い、分子メカニズムを明らかにしつつある。さらに、当初の予想を超えて、nSBの骨格RNAであるHSATIII lncRNAが担う上記以外の第三の分子機構を見出し、その解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今度も、nSBが担う熱ストレス回復期特異的なスプライシング制御機構と、その基盤となる温度変化依存的・経時的なnSBの構成変化の分子メカニズムを明らかにしていく。また、これまでに得られたnSBにより制御されるtranscriptomeデータを活用して、nSBの細胞における役割を明らかにしていく。 2020年度に見出したHSATIII lncRNAの新たな分子機構についても、解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
2020年度は、所属研究室の大阪大学への移転に伴い年度途中に異動があったことと、在宅勤務が増えたことにより、研究計画の一部変更をしいられた。また、参加予定学会の延期・オンライン開催などにより、当初計上していた旅費の未使用などがあった。そのため、当該助成金の次年度使用額が生じた。当初予定額と合わせて、これまでに明らかにしたHSATIII lncRNAおよびnSBの3つの分子機構について、詳細な分子メカニズムや細胞における役割を明らかにするための分子生物学的・細胞生物学的解析をさらに強く推進する。
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