2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K06479
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山崎 智弘 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 講師 (90732280)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 核内構造体 / 相分離 / 長鎖ノンコーディングRNA / NEAT1 / RNA結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物の細胞核には、細胞膜を持たない核内構造体が数多く存在しており、特定の分子を局所的に集まることで、特異的で効率的な反応を進めたり、特定の分子を隔離するなどの機能を有している。このような構造体の形成機構として、相分離と呼ばれる物理的過程が重要であることが明らかになり、大きな注目を集めている。一方、哺乳類ゲノムから産生される多くの長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)のうち一群のものは、一部の相分離構造体を誘導する上で必須の役割をもつことが明らかになっており、arcRNAと呼ばれる。このようなarcRNAには、生理的に重要な機能を有するものが多く見つかっており、多様な機能を持ち、様々な形態を取ることが明らかになってきている。私たちはこれまで、NEAT1と呼ばれる核内相分離構造体パラスペックルの形成に必須のarcRNAについて詳細な解析を進めてきた。CRISPR/Cas9とヒト一倍体細胞株を利用した実験系により、NEAT1の機能RNAドメインの探索を行い、特定のRNAドメインが、そこに結合するタンパク質とともに構造体の相分離やその形態・機能を規定しているを明らかにしてきた。つまり、RNAには相分離構造体の性状を決める機能RNPモジュールドメインが存在しており、相分離構造体の設計図の役割を果たしていることが明らかになった。このような知見から、本研究では、このような相分離構造体の性状決定に関わるRNA配列・二次構造およびそこに結合するパートナータンパク質の同定と詳細な分子解析、さらには人工的な相分離構造体の形成などの実験系を構築することにより、RNAによる相分離構造体形成の根幹をなす設計原理を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、パラスペックルの独立性の維持に関わるタンパク質を同定しており、そのタンパク質のどのドメインが機能的に重要であるかについて解析を進めてきた。その結果、ポリマー化を担うドメインやアミノ酸配列の偏った決まった立体構造を取らないプリオン様ドメインが独立性の維持に重要であることが明らかになった。さらに、そのプリオン様ドメインの特定のアミノ酸残基が重要であることも特定してきている。加えて、精製タンパク質を用いた試験管内での相分離実験も確立した。同様に、パラスペックルの形態や規則的な構造を規定しているタンパク質について、NEAT1の機能RNAドメインのさらなる絞り込みや繋留実験により、機能タンパク質について同定を進めている。また、人工的にRNAを用いて相分離構造体を作り上げる実験システムの構築にも成功し、これまでに知られている構造体形成に必須なRNA結合タンパク質をRNAに結合させた際には、核内で相分離構造体が形成される様子が観察されている。
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Strategy for Future Research Activity |
相分離構造体の独立性維持のメカニズムについては、これまでに明らかにしているタンパク質のどのような性質がその機能に重要であるかを明らかにすることで、相分離構造体が独立して存在するための機構を明らかにする。方法としては、これまでに作成した変異タンパク質を用いて、試験管内での野生型と変異型のタンパク質の物性の違いと機能との関連を調べる。また、パラスペックルの形態や規則的な構造を規定しているタンパク質については、因子を同定でき次第、同様に変異体解析などを進める。また、RNAによる人工的な構造体形成の実験系を用いることで、様々なRNA結合タンパク質によって、相分離が誘導されるか、さらに上記のタンパク質を用いることで形態などを制御できるかについても試みる予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していなかった研究室の引越しや新型コロナウイルスの影響による外部発注の問題が生じたため、次年度に繰り越すことにし、できるだけ早い時期に消耗品や外注作業費などに充てることにした。
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Research Products
(15 results)