2019 Fiscal Year Research-status Report
核酸導入に関わる選択的オートファジー複合体の制御機構の解明
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19K06488
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土屋 惠 大阪大学, 生命機能研究科, 特任助教(常勤) (00390691)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遺伝子導入 / 選択的オートファジー / オートファジーレセプター / ユビキチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、選択的オートファジーレセプターであるp62が遺伝子導入において重要な働きを担うことから、p62の形成するタンパク複合体がその分子基盤であると考え、その複合体の解析を試みた。始めにp62依存的な遺伝子導入の抑制が遺伝子導入方法によって異なるかを確認するため、代表的な遺伝子導入法であるリポフェクションとエレクトロポレーションを比較した。野生型MEF細胞では、リポフェクションとエレクトロポレーションとではDNAの導入効率に変化は見られなかった。一方、p62欠損MEF細胞でリポフェクションにてDNA導入を行なった場合、野生型MEF細胞に比べて飛躍的に遺伝子導入効率が上昇するのに対し、エレクトロポレーションでは逆に低下する結果となった。この結果はp62がエンドサイトーシスを介した遺伝子導入を特異的に抑制する作用を持つことを示し、リポフェクションによる遺伝子導入処理により特異的に形成されるp62タンパク複合体を捉えるには、エンドサイトーシス前後に誘導される細胞内因子に注目する必要があることが明らかとなった。そこでエンドサイトーシス直後のp62および周辺の細胞内因子の変化を検討したところ、遺伝子導入直後から細胞内オートファジーの活性化と共にp62のリン酸化が急激に誘導されることが確認された。この結果からp62のリン酸化を誘導する因子がエンドサイトーシス直後に大きく動くことが予測されたため、まずそのリン酸化キナーゼであるCK2およびTBK1に注目した。それぞれの阻害剤の遺伝子導入に対する効果を確認したところ、CK2阻害剤ではほとんど効果が見られなかったものの、TBK1阻害剤では顕著な遺伝子導入効率の促進効果が見られた。この阻害剤の効果はMEF細胞だけでなく様々な細胞種で確認することができ、TBK1とその誘導に関わる細胞内因子がp62タンパク複合体形成に関与することが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は複合体の解析をするにあたり、目的とする複合体を効率的に捉える方法を模索した。遺伝子導入によるエンドサイトーシスによりp62が急激にリン酸化されることに着目した結果、リン酸化に関連した因子が誘導され複合体形成に関わることが明らかとなった。複合体形成のタイミングを捉えることで、今後の複合体精製をより効率よく行うことができるようになり、すでにp62に作用するいくつかの候補因子が確認されている。この因子を中心にその周囲の関連因子を検索することで、精製された複合体因子のそれぞれの機能を明らかにすることが可能だと考えている。さらにp62複合体に作用する低分子化合物の探索のため、遺伝子導入効率を定量化するアッセイ系の構築を行った。遺伝子導入効率の低い野生型MEF細胞へ、ルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだレポーターベクターを遺伝子導入し、ルシフェラーゼタンパクの発現量を定量するアッセイ系のスケールダウンを行い、ハイスループットスクリーニングでアッセイできる系を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に構築したハイスループットスクリーニングアッセイ系を用い、p62タンパク複合体に作用する化合物の探索のためのハイスループットスクリーニングを進める。p62タンパク複合体に対し特異的な効果を持つ低分子化合物を探索するために、野生型MEF細胞を用いた一次スクリーニングにて得られた化合物について、さらにp62欠損MEF細胞とで比較を行い、p62複合体の機能への作用が明らかな低分子化合物の定量的な同定を行う。またルシフェラーゼレポーターベクターをゲノムに組み込んだMEF細胞の樹立を行い、遺伝子導入に対して特異的に作用する化合物であるかどうかを検討する。これらに並行し、精製された複合体の構成因子の同定を進め、p62を中心とした異物排除機構への関与の分子メカニズムを明らかにする。これまでに確認されているp62リン酸化に関与するいくつかの因子を足がかりにし、さらに遺伝子導入に応答すると予測されるユビキチン化関連酵素、DNA進入センサーとなりうる因子などに着目し同定を進める。また遺伝子導入に用いる核酸の種類を変え、複合体構成因子が核酸の種類によって変化するかどうかの検討も行う。これによりスクリーニングで選択された化合物が広い範囲の遺伝子導入に応用可能かどうかを確認する。
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Causes of Carryover |
当初の実験計画としてはまず複合体精製およびその構成因子の同定を目標にしていたが、複合体構成因子の細胞種や導入する核酸の種類により複合体の構成は容易に変化することが予想され、それぞれの結果から共通して機能する因子を見出すためには異なる条件での複数の精製が必要であると考えられた。そこで本年度は複合体精製に先駆け、遺伝子導入後のp62の翻訳後修飾に着目し、修飾に関与すると考えられる因子や同時に誘導される因子の機能から、着目した翻訳後修飾の阻害剤が有望な遺伝子導入促進剤となりうるかどうかの検討を行なった。そのため当初計画していた複合体の精製および構成因子の同定はまだ進行中である。これらの解析に必要な受託研究等にかかる経費は次年度に使用する予定であり、また本年度後半に予定されていた他研究機関との研究打ち合わせが次年度に延期されたことから、それらにかかる経費ついても次年度以降に使用予定である。
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Research Products
(5 results)