2020 Fiscal Year Research-status Report
極長鎖脂肪酸合成における核膜タンパク質Lem2-Bqt4の役割
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19K06489
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平野 泰弘 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (10508641)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Lem2 / Bqt4 / 核膜 / Elo2 / 極長鎖脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
核膜に局在する核膜タンパク質はクロマチンとの相互作用を通じて細胞の分化運命決定に関与するなど、細胞の機能発現に重要な役割を果たす。真核生物に広く保存される核膜タンパク質lem2遺伝子は、同じく核膜タンパク質bqt4遺伝子との二重破壊で合成致死となる。我々はこの致死性が極長鎖脂肪酸の増加よって相補されることを見出していた。本研究は極長鎖脂肪酸合成におけるLem2-Bqt4の役割を明らかにすることで、核膜タンパク質を基盤とした脂質合成制御の生物学的意義の解明を目指すものである。 これまでの研究によって、Lem2-Bqt4二重破壊株ではセラミド量が減少することで核膜が脆弱となり、破れやすくなること、これによる核タンパク質の漏出が致死の原因となることを明らかにしていた。極長鎖脂肪酸合成酵素であるElo2を過剰発現させることによって核膜が破れにくくなり、この現象はElo2の酵素活性に依存していた。本年度はLem2-Bqt4二重破壊株の致死性を相補するElo2以外の遺伝子のスクリーニングを進め、機能未知の遺伝子を同定した。アミノ酸配列解析から、この遺伝子は極長鎖脂肪酸からセラミドを合成する酵素であることが示唆され、putative ceramide synthase1(PCS1)と名付けた。セラミドは極長鎖脂肪酸とスフィンゴシンからなる物質であり、PCS1とElo2が協調して働くことで致死性を回避していると考えられた。現在はPCS1がセラミド合成活性を持つか、についての解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究開始時に提案した研究項目についてはおおよその解析が終了し、 ・lem2bqt4二重破壊によって極長鎖脂肪酸を含むセラミド量が減少すること ・これによって核膜が破れやすくなったことが致死性につながっていたこと ・極長鎖脂肪酸合成酵素Elo2の過剰発現によってセラミド量が回復することで致死性を相補したこと を見出した。その上で、新たに致死性を相補する遺伝子を発見でき、研究を新たな方向に進めることができた。よって、本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、新規に同定したPCS1がなぜlem2bqt4二重破壊株の致死性を相補するかについて検討を行う。細胞内の極長鎖脂肪酸はほとんどがセラミドの合成に利用されることから、Elo2とPCS1の機能的関連についても解析を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって学会発表や共同研究の打ち合わせを延期し、次年度に改めて研究発表を行うこととした。
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Research Products
(4 results)