2019 Fiscal Year Research-status Report
HSF1複合体によるエピジェネティックな遺伝子発現制御機構の解明
Project/Area Number |
19K06490
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
藤本 充章 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (80359900)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | HSF1 / ChIP-mass / 凝集体形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞が高温に曝されると一群の熱ショックタンパク質(HSP)が合成される。この応答は熱ショック応答と呼ばれ、主に熱ショック転写因子(HSF)によって制御される。高等動物のHSF1結合タンパク質であるエピジェネティック関連因子が熱ショックタンパク質群の遺伝子発現にどのように制御するかは不明である。そこで、HSF1に結合するエピジェネティック関連因子をChIP-mass法を用いて同定した。 ChIP-mass解析から、新たにヒストン修飾に関与するTRRAP, TRIM24やTRIM33を同定した。HeLa細胞でTRRAPをノックダウンすると熱ストレス後のHSP70誘導が減少した。よって、熱ストレスでTRRAPがHSP70誘導を促進するために必要であることを見出した。HSF1-TRRAP複合体の形成は熱ストレス条件下で増加し、この複合体の相互作用は熱ストレスで起こるHSF1-S419のリン酸化に依存していた。さらに、この複合体形成に必要なTRRAPの領域も同定している。HeLa細胞で内在性HSF1をHSF1-TRRAP複合体を阻害するHSF1-S419変異体やTRRAPの変異体に置換し、熱ストレス後のHSP70誘導を調べると顕著に誘導が減少することが分かった。また、TRRAPはHSP70プロモーター領域に熱ストレスによりリクルートされ、HSF1-TRRAP複合体がプロモーター領域のヒストンH3とH4のアセチル化の亢進に必要であった。HSF1-TRRAP複合体は、少なくともp400/TIP60複合体HSP70プロモーターにリクルートすることでクロマチン弛緩およびHSF1結合の促進に働いていた。さらに、HSF1-TRRAP複合体はPolyQ81-GFP凝集体形成を抑制することが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HSF1-TRRAP複合体を阻害するHSF1変異体およびこの複合体形成に必要なTRRAP領域を同定している。また、HSF1やTRRAPは熱ストレスでHSP70プロモーター領域に顕著にリクルートされ、さらにHSF1-TRRAP複合体形成を阻害するHSF1-S419変異体では両遺伝子のリクルートは減少した。また、この複合体がクロマチン弛緩に関与することも明らかにした。 以上のことから、申請書の計画書に記載していた今年度の実験であり、おおむね順調に研究が遂行されている
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、HSF1をノックダウンしたHeLa細胞にTRRAPと結合できないHSF1-S419点変異体を戻し、マイクロアレイ解析を行いターゲット遺伝子を同定する。さらに、ChIP-seqを行い、HSF1とTRRAPがゲノムのどの領域にリクルートされているかをゲノムワイドに解析する。同定したHSF1-TRRAP複合体がTRIM24やTRIM33のリクルートに関与しているかをChIPアッッセイ法で調べる。TRIM24やTRIM33がHSP70プロモーター領域のクロマチン構造に変化を与えるかを検討する。
|