2020 Fiscal Year Research-status Report
HSF1複合体によるエピジェネティックな遺伝子発現制御機構の解明
Project/Area Number |
19K06490
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
藤本 充章 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (80359900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | HSF1 / ChIP-MS / TRRAP / TRIM33 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱ショック応答(HSR)はプロテオスタシス容量を調整する重要な応答である。 HSRは主に哺乳動物細胞における熱ショック因子(HSF1)によって転写のレベルで調節されている。 ゲノムDNAに結合するHSF1複合体を包括的に同定するために、我々はChIP-MS解析を行った。HSF1相互作用タンパク質として新たにヒストン修飾に関与するTRRAPを同定し、熱ショックによるHSP70誘導に必須であることが分かった。 HSF1-TRRAP複合体の形成は、熱ショック時のHSF1-S419のリン酸化に依存していた。さらに、HSF1-TRRAP複合体は、HSP70プロモーターにTIP60とp400の両方をリクルートし、TRRAP-TIP60-p400複合体はクロマチン活性状態を確立するためにヒストンアセチル化(H3K18ac, H4K16acなど)を亢進していた。H3K18acのリーダーであるTRIM33も、熱ショック時にHSP70プロモーターにリクルートされ、HSP70誘導に必須であった。また、HSP70プロモーター周辺部のヒストンのアセチル化にはp300も関与することを明らかにした。ChIP-MS解析より、HSF1がキナーゼであるPLK1と相互作用することが分かった。PLK1阻害剤を処理するとHSF1-S419のリン酸化が阻害され、HSF1-TRRAP複合体の相互作用が抑制された。がん細胞では構成的にHSF1-S419のリン酸化が起こっている。そこで、内在性HSF1をHSF1-S419変異に置換するとがん細胞の増殖抑制効果が見られた。よって、HSF1リン酸化を介するエピジェネティック調節がプロテオスタシスを維持し、腫瘍形成を促進すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HSF1-TRRAP複合体にHSF1-S419のリン酸化が必須であることを同定している。さらに、この複合体にTIP60がリクルートされ、HSP70プロモーター領域のヒストンをアセチル化することを明らかにした。ヒストンアセチル化のH3K18acはTRIM33を呼び寄せ、HSP70誘導に必要であることが分かった。がん細胞では、HSF1-S419のリン酸化が亢進が見られ、このリン酸化ががん細胞の増殖に関わることを明らかにした。 以上のことから、申請書の計画書に記載していた今年度の実験であり、おおむね順調に研究が遂行されている
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Strategy for Future Research Activity |
HSF1-TRIM複合体とHSF1-TRRAP複合体によるエピジェネティックな変化が蛋白質ホメオスタシスに関与するか検討する。 各種がん細胞を用いて、HSF1-TRRAP複合体形成を阻害するHSF1-S419変異体への置換あるいはPLK1阻害剤処理によるがん細胞増殖の抑制効果を調べる。上記で調べたがん細胞の抑制効果が顕著に見られた細胞を用い、同様の処理を行ったがん細胞をヌードマウスの皮下に移植して腫瘍の形成変化を発光イメージングシステム(IVIS imaging system)により定量化し、また組織を染色(H&E染色、増殖マーカーのPCNA染色など)で調べる。
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