2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K06491
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
冨川 千恵 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (60527696)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | small RNA / 翻訳 / アミノアシルtRNA合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳酸菌に存在するtRNA様のsmall RNAの機能を探るべく以下の実験を行いました。 (1)当該RNAに対する親和性タンパク質の同定→当該RNA転写物の5'末端にビオチンを付加させ、乳酸菌細胞抽出液(S30およびS100画分)を用いて親和性タンパク質の検出を試みました。S30画分中に親和性タンパク質を確認でき、タンパク質質量分析によりいくつか候補タンパク質を得ることができました。現在、これらタンパク質とsmall RNAの相互作用について、さらなる解析を進めているところです。 (2)乳酸菌GlyRSの解析→tRNA様のsmall RNAは、アンチコドンにあたる塩基の並びからイソロイシンコドンと対合するように見えますが、細胞内ではイソロイシンではなくグリシンが結合することが分かっています。乳酸菌グリシルtRNA合成酵素(GlyRS)が当該RNAを基質とするのかを明らかにするため、生化学解析と構造解析を進めました。複数の変異RNAを調製しその測度論解析を行い、乳酸菌GlyRSがtRNAのどの部分を認識しているのかを明らかにしました。また、GlyRS単独、GlyRS-small RNA複合体の結晶化を試み、X線結晶構造解析可能な結晶を得ることができました。現在、さらに良質な結晶を得るため条件検討を行っています。 (3)乳酸菌IleRSの解析→tRNA様のsmall RNAがイソロイシルtRNA合成酵素(IleRS)の基質とならないのか解析を行いました。我々の実験結果からは当該RNAがIleRSによってイソロイシル化されるという結果は得られていないため、当該RNAはイソロイシンtRNAではないと考えています。また、IleRSについても詳細な生化学解析を行ったところ、これまで基質認識に重要とされていたアミノ酸残基以外に重要な残基があることを示唆するデータを得ることができました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予期していなかった研究結果を得ているが、得られた結果は新規であり今後も研究を進めていく価値があるものと思われます。まだ論文にまとめることができてはいませんが、これまでの成果を学会で発表することはできました。アミノアシルtRNA合成酵素の解析が多方面で進んだこと、tRNAIle(UAU)様分子に関係すると考えられる因子の候補を複数あげることができたことから、「おおむね順調に進展している」と評価しました。
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Strategy for Future Research Activity |
乳酸菌に存在するtRNA様のsmall RNAの機能を探るべく、以下の研究を進めます。 (1)当該RNAに対する親和性タンパク質の同定→タンパク質質量分析結果により、複数の親和性タンパク質候補が得られました。これらタンパク質とsmall RNAとの親和性をゲルシフトアッセイ等により明らかにします。また、親和性タンパク質の機能から、small RNAの細胞内での機能について探ります。 (2)乳酸菌GlyRSの解析→生化学解析は完了したので、GlyRSのX線結晶構造解析をおこないます。α2β2ヘテロ二量体GlyRSの結晶構造はGlyRS単独でも明らかにされていませんので、たとえGlyRS単独であっても報告に値すると認識しています。 (3)乳酸菌IleRSの解析→現在、IleRSの複数の変異酵素を調製し、生物種によるIleRSの基質認識の違いを明らかにしようと試みています。そのためには、乳酸菌tRNAの修飾ヌクレオシドの同定も必要であるので、tRNAの単離および放射性同位体を用いた実験による修飾ヌクレオシドの同定に着手します。
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