2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06499
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
木下 和久 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (60447886)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 染色体 / 細胞分裂 / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
分裂期染色体構築の過程において中心的役割を果たすコンデンシンIの作用機序の解明を目指し、コンデンシンIのkleisinサブユニットCAP-Hの役割に注目して解析をおこなった。CAP-Hのドメイン中のアミノ酸残基に点変異を導入し作製した変異型ホロ複合体のうち、極めて特徴的な染色体構築異常を示すモチーフIII変異体(III-6Q変異型複合体)を用いてより詳細な解析を行った。III-6Q変異型複合体はバナナ様の形状をしたDNAクラスターの中に異常な軸様構造を形成するが、カエル精子核の代わりにマウス精子核を基質として用いた場合には比較的正常に近い染色体を形成できる。しかしながらトポイソメラーゼ IIを除去してマウス精子核の基質DNAの絡み合いが解消されにくい条件にすると、DNAクラスターの過剰な凝縮を引き起こす「豆 (bean)」表現型が観察される。III-6Q変異型複合体ではコンデンシン複合体間相互作用が過度に強化されているのではないかと考えられ、「豆 (bean)」表現型に注目しさらに解析を進めた。「豆」状の過凝縮したDNAクラスターにトポイソメラーゼ IIを再添加すると「豆」様構造が解消され、さらに軸状の染色体が形成されることがわかった。この結果は「豆」表現型が、変性したタンパク質のランダムな凝集によって引き起こされるものではなく、productiveなコンデンシン複合体間相互作用が基質DNAの絡み合いの程度の違いによって変化しており、両者のバランス制御の異常によって生み出されていることを示唆している。また「豆」様構造のサイズが変異型複合体の添加濃度および反応時間に比例してよりコンパクトに凝集していくことを見出した。コンデンシン複合体間相互作用を詳細に解析するためのツールとして、今後も引き続きこの変異型複合体を用いた機能アッセイを活用していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度(2019年度)当初に立てた推進方策のとおり、コンデンシンIの機能におけるKleisinサブユニットCAP-Hの役割、特にCAP-Hの中央領域にあるドメインの果たす役割についてより理解を深めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
コンデンシンIの分子機能、特にコンデンシン複合体間相互作用においてKleisinサブユニットが他のコンデンシンIのサブユニット(HEATサブユニットおよびSMCサブユニット)とどのようにクロストークしながら機能するのかに注目しさらに研究を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究計画で予定していたタンパク質の発現および精製にかかる分子生物学実験用の試薬、実験器具および消耗品の購入が予想よりも少なく済み、また研究成果の発表の機会がキャンセルになり次年度に延期されたため次年度使用額が生じた。現在までの研究の遂行時と同様に、研究費の大半はタンパク質の発現および精製にかかる分子生物学実験用の試薬、実験器具および消耗品の購入に使用する予定である。また研究を推進する上で必要な研究の情報収集と討論、および研究成果の発表のための旅費を含めた費用としても、研究費を使用する。
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Research Products
(1 results)