2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06499
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
木下 和久 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (60447886)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 染色体 / 細胞分裂 / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
分裂期染色体構築において中心的役割を果たすコンデンシンIの作用機序の解明を目指し、組換えサブユニットから再構成した複合体とカエル卵抽出液を組み合わせたアッセイ系を用いて解析を行なった。前年度に引き続き、トポイソメラーゼII除去条件下においてDNAの過剰凝縮(bean表現型)を引き起こす変異体に注目して解析を進めた。この過剰凝縮にはコンデンシンIの2つのHEATサブユニットのうちの1つCAP-D2が不可欠であり、さらにドメイン解析からCAP-D2のKGループと呼ばれるサブドメインを必須領域として同定した。他のグループの解析からCAP-D2のKGループがコンデンシンI複合体内でSMC4サブユニットと相互作用することが報告されていたが、研究代表者はCAP-D2とSMC4間の相互作用は単一の複合体内だけでなく、複数の複合体間における相互作用に必要であるという仮説を立てこれを検証した。その結果、KGループと相互作用するSMC4のサブドメイン(Wループ)に変異を導入した複合体はKGループ変異複合体と同様な凝縮欠損を示し、さらにWループ変異複合体とKGループ変異複合体の2種類の複合体を同時に共存させることによって欠損表現型が部分的に回復することがわかった。このSMC4とCAP-D2を介した複合体間相互作用はトポイソメラーゼIIを除去した特殊な条件で過剰凝縮を引き起こすだけでなく通常の分裂期染色体の軸構造の形成にも必須であることがわかった。各変異複合体のループ押出し活性を調べたところ、過剰凝縮および凝縮欠損の二つの対照的な表現型との相関は見出されなかった。以上の結果は、分裂期染色体構築にはループ押出しメカニズムだけでは十分でなく、コンデンシン間相互作用がループ間の反発に拮抗して働くことが重要であることを示唆しており、論文において新たな作用モデルとして提唱した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度(2021年度)当初に立てた推進方策のとおり、コンデンシンIの複合体間相互作用においてCAP-D2サブユニットおよびSMC4サブユニットがどのように貢献をしているのかその詳細を明らかにすることが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
コンデンシンIの分子活性のうち引き続き特に複合体間相互作用の制御メカニズムに注目して研究を推進していく予定である。ループ押し出し活性等の他の分子活性との関連も含め、コンデンシンの分子活性がどの程度進化的に保存されているかについて検討したい。
|
Causes of Carryover |
予定していたタンパク質の発現および精製にかかる分子生物学・生化学実験用の試薬、実験器具および消耗品の購入が予想よりも少なくなったこと、また研究成果発表予定していた学会の開催がコロナ禍による影響でオンライン形式に変更され出張旅費が不要になったことなどの理由から次年度使用額が生じた。次年度もこれまでと同様に、研究費の大半はタンパク質の発現および精製にかかる実験用試薬、実験器具および消耗品の購入に使用する予定である。また研究を推進する上で必要な研究の情報収集と討論、および研究成果発表のための旅費を含めた費用としても、研究費を使用する。
|
Research Products
(2 results)