2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒトヘルペスウイルス6の宿主受容体認識を司るウイルス糖蛋白質複合体の構造解析
Project/Area Number |
19K06512
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西村 光広 神戸大学, 医学研究科, 助教 (40510285)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘルペスウイルス6 / X線結晶構造解析 / クライオ電子顕微鏡解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではヒトヘルペスウイルス6(human herpesvirus 6; HHV-6)の宿主受容体認識を司るウイルス糖タンパク質複合体gH/gL/gQ1/gQ2の立体構造と受容体認識機構及び中和抗体による阻害作用の機序の解明に取り組んだ。当該年度では昨年度に引き続きHHV-6Bに由来するgH/gL/gQ1/gQ2複合体タンパク質を精製し、2種の中和抗体のFabと混合して結晶化した結晶について結晶構造解析を行った。昨年度に得られた最高分解能3.8Åまでの回折データを基に構造解析を進め、gQ1と思われる電子密度にαヘリックス、βシート構造等の二次構造を見出す事ができた。gH/gL/gQ1/gQ2結晶の更なる回折能向上のために、gH/gL/gQ1/gQ2及び中和抗体Fabの精製法の再検討を行い、より精製度の高いタンパク質を得る事ができた。 X線結晶構造解析と並行して、クライオ電子顕微鏡を用いたgH/gL/gQ1/gQ2の構造解析を行った。クライオ電子顕微鏡解析ではgH/gL/gQ1/gQ2単体、gH/gL/gQ1/gQ2と中和抗体Fabの複合体、gH/gL/gQ1/gQ2と中和抗体Fabそして受容体CD134の複合体の試料について解析を試みた結果、gH/gL/gQ1/gQ2と中和抗体Fabの組み合わせが最も解析に適している事が示唆された。また電子顕微鏡像の単粒子解析では二次元平均像において、gH/gLと思われる領域とgQ1/gQ2と思われる領域との間で相対位置が揺らいでいる事が観察された。三次元再構成像では、X線結晶構造解析で得られている電子密度と、三次元空間上の形状においての一致が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究では、HHV-6B gH/gL/gQ1/gQ2複合体の立体構造の解明に向けてX線結晶回折データの解析を進め、構造決定を進める事ができた。構造決定のためには今後、より回折能に優れた結晶を作製する必要があるが、この点に対してタンパク質の精製度を高める事で対応する事とし、カラムクロマトグラフィーでの精製法の再検討を多なう事で、より純度の高い結晶化試料が得られている。したがって立体構造の決定に向けて研究計画はおおむね順調に進展していると言える。さらにX線結晶構造解析において予期しない事態で構造決定が難航することに備え、クライオ電子顕微鏡での構造解析も並行して行っている。既に予備的な実験によって解析に適した試料を選定しており、データの取得を進めている。この点では前年度の負染色電子顕微鏡解析での成果や、中和抗体及び受容体との相互作用解析の結果を活かす事ができた。これまでのクライオ電子顕微鏡像の解析ではgH/gL、gQ1/gQ2と思われる領域をそれぞれ見出す事ができており、それらの間での相対配置の揺らぎと言ったgH/gL/gQ1/gQ2タンパク質複合体内の物性的特徴も見出している。この情報は今後の構造解析においても重要であり、特にクライオ電子顕微鏡解析においては、別々の像として分けて解析を進める事で対応する方針で進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度においてはHHV-6B gH/gL/gQ1/gQ2複合体の原子分解能での構造決定を第一の目標として、その達成のための研究に取り組む。X線結晶構造解析においては、多量の良質な結晶を用いる事で回折データのマージ法によって分解能を向上させることができると考えられるため、大量のタンパク質の調製を行い、今年度で確立した精製法によって高純度のタンパク質試料を準備した上で、結晶化を行う。このためタンパク質の大量調製法についても検討を行う。並行して進めているクライオ電子顕微鏡での解析では、必要に応じて高純度の試料を作製し、クライオ電子顕微鏡像のデータ取得を継続的に実施する。クライオ電子顕微鏡解析では、解析に用いる電子顕微鏡像の数が重要であるため、継続的な解析を行う事で三次元再構成像の分解能の向上を進める。またgH/gLとgQ1/gQ2間での構造の揺らぎが解析に影響を及ぼす事が予想できるため、それぞれの部分を特定し、別々に解析する事でデータの質を向上させる。 以上のいずれかの方法で十分な情報が得られた場合には、それに基づいて原子分解での構造を決定し、その分子機能についてのこれまでの知見に基づいた考察を行うとともに、構造から新たに得られた知見に関して分子生物学及びウイルス学的な解析を実施し、学術論文として公表を行う。
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