2020 Fiscal Year Research-status Report
グループⅣ[NiFe]ヒドロゲナーゼの水素合成-プロトンポンピング共役機構の解明
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19K06521
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
庄村 康人 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (50423900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水素合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,[NiFe]ヒドロゲナーゼの中でも特に構造や機能の理解が進んでいないグループⅣ[NiFe]ヒドロゲナーゼに着目し,X線結晶構造解析によって①本酵素の作動原理ならびに酸素抵抗性および水素分解・合成バイアス決定要因を原子レベルで理解すること,および②進化的に類縁するエネルギー代謝複合体とのメカニズムや構造における共通点と相違点を明らかにすることを目的とする. 昨年度は精製効率の向上を目指し,対象となる高度好熱菌の相同組換えの系を確立するとともに,ゲノムDNAへのアフィニティータグの挿入を行い安定株の作製に成功した.今年度はまず,作製した株を用いて培養条件の検討を行い,還元剤や硫黄源の種類と濃度,培養時間,および生育温度の最適化によって標的タンパク質の収率が最大となるような条件を決定した.また,標的タンパク質の可溶化条件の検討においては,界面活性剤の種類,濃度,および可溶化の際の温度と時間について最適化を行った.さらに精製条件の検討として,使用するカラムと溶出条件の最適化を行った.その結果,アフィニティーカラム1回の精製で,SDS-PAGEで標的タンパク質のサブユニットのバンドが明瞭に確認できる程度の純度の精製標品が,数mg得られるようになった.また,アフィニティーカラム後にゲルろ過カラムによる精製を行ったところ,アミノ酸配列から計算した推定分子量に近い位置に単一の溶出ピークを確認できた.さらに,最終精製標品をKEKつくばの共同利用クライオ電顕施設に持ち込んで,グリッド作製の条件検討に着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,2019年度に作製した株からの標的タンパク質の単離・精製を行うことを目標としたが,これは達成することができた.もしアフィニティータグの種類や挿入位置が不適切であるという結果が出た場合には,再度遺伝子組換え体の設計と作製をする必要があったが,その必要はなかったため計画に遅延は生じなかった.一方,ゲルろ過後の精製標品は濃縮操作によって複合体が解離するという現象が見られ,2020年度内にはこの問題を解決することができなかったため,進捗状況の区分を「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は精製した複合体を不安定化する要因を調べ,クライオ電顕による単粒子解析が可能となるような試料調製を目指す.また,標的タンパク質は酸素雰囲気下では活性部位の金属クラスターが不安定であり,現状では嫌気条件下でグリッド作製は困難であるため,X線結晶構造解析を見据えて嫌気グローブボックス内での結晶化条件の探索にも着手する.
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Causes of Carryover |
理由:残額が細かすぎて使い切れなかったため. 使用計画:次年度の助成金と合わせて,精製のための試薬の購入に使用する.
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