2019 Fiscal Year Research-status Report
異常タンパク分解系を標的とした運動ニューロン疾患治療薬の開発
Project/Area Number |
19K06523
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤内 玄規 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (00748353)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝野 雅央 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50402566)
佐橋 健太郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (90710103)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 運動ニューロン疾患 / 球脊髄性筋萎縮症 / タンパク質品質管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)などの神経変性疾患は根本的治療法のない致死的神経変性疾患である。これらの疾患の特徴として神経細胞の変性と蓄積が見られる。SBMAにおいては変異アンドロゲン受容体(AR)タンパク質の神経細胞核内への蓄積が病因と考えられる。本研究では変異ARタンパク質の蓄積過程を可視化することで、SBMAの病態解明とタンパク質品質管理機構に関わる分子を標的とした効果的で臨床応用可能な治療法の開発を目指す。 本研究ではCAGリピートが97に異常伸長したAR遺伝子(AR-97Q)と蛍光タグ及び核移行シグナル(NLS)が融合した遺伝子を発現するNSC34細胞を作成しSBMA培養細胞モデルとして使用する。このSBMA培養細胞モデルに蛍光タグを付加したタンパク質品質管理機構に関わる重要な分子を共発現させ、様々な条件下で時間経過とともに解析しそれぞれの分子の発現や核内蓄積への影響を検証する。またARタンパク質とタンパク質品質管理機構に関わる各分子との相互作用を解析する。 さらに様々な長さのCAGリピートを持つAR遺伝子を導入したSBMA細胞モデルを作成し、ARタンパク質のポリグルタミン鎖の長さの違いによるタンパク質品質管理機構関連分子との相互作用の変化を解明する。ARタンパク質とタンパク質品質管理機構に関わる各分子の発現と局在はSBMA患者剖検組織においても解析する。 またSBMAモデル動物としてAR-97QまたはAR-24Qを導入したSBMAモデル線虫を作成し、すでに樹立しているSBMAマウスとともにタンパク質品質管理機構に関わる分子を標的としドラッグスクリーニングを行いその治療効果を検討する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はCAGリピートが97に異常伸長したAR遺伝子(AR-97Q)といくつかの蛍光タグ及び核移行シグナルを発現するNSC34細胞を作成した。このSBMA細胞モデルは変異ARタンパク質の核内蓄積を再現しており今後ドラッグスクリーニングなど様々な解析に用いる予定である。 またこのSBMA培養細胞モデルに共発現させるタンパク質品質管理機構に関わる重要な分子をクローニングし変異ARの蓄積に対する作用も解析済みであり、いくつかの分子が変異AR凝集体と共局在しており発現量が低下していた。さらにAR遺伝子のCAGリピートの伸長と凝集についても解析が進んでおり、変異AR凝集体に含まれるタンパク質品質管理機構に関わる分子のリピート長による変化も判明した。 変異ARと関わることが判明した分子を標的としたドラッグスクリーニングを行うためにまずはUPSやオートファジーを賦活化すると報告のある薬剤(ラパマイシン、FK506など)を用いて各分子のプロモーター領域の活性を検討するとともにウェスタンブロット、real-time PCR、免疫組織化学などを用いて発現量の変化を検討している。 SBMA培養細胞で変異ARタンパク質との相互作用があったタンパク質品質管理機構に関わる各分子の発現と局在はSBMA患者剖検組織においても免疫組織化学、In-situハイブリダイゼーション法を用いて解析を進めており当初の実験予定よりも進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の解析で変異ARと関わることが示唆されたタンパク質品質管理機構関連分子の発現量をウイルスベクターやsiRNA、ASOを用いて変化させ変異ARの発現やSBMA培養細胞モデルの病態に与える影響を解析する予定である。 また本年度実施したAR遺伝子のCAGリピートの伸長と変異AR凝集体に含まれる分子の解析をさらに進め、リピート長による毒性の変化の解明を目指す。 さらに現在作成中のSBMAモデル線虫を樹立し、SBMA培養細胞モデルとともにタンパク質品質管理機構に関わる分子を標的としドラッグスクリーニングを行う予定である。本年度実施したUPSやオートファジーを賦活化すると報告のある薬剤(ラパマイシン、FK506など)をポジティブコントロールとして用いて、既存薬ライブラリを作用させその効果をモニタリングする。またHit化合物についてはすでに作成済みである各分子のプロモーター遺伝子を用いてその活性を検討するとともにウェスタンブロット、real-time PCR、免疫組織化学などを行い各分子のタンパク質及びmRNAの発現レベルを明らかにする。また有望なHit化合物については当研究室で作成された、異常伸長したCAGリピートを持つヒト全長AR遺伝子を発現するSBMAモデルマウスに対し長期間投与し、表現型を解析する予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由)情報収集に予定していた旅費がコロナの影響で使用できなかった。 (使用計画)実験動物(マウス)飼育に充当する予定である。
|