2019 Fiscal Year Research-status Report
シグナル脂質代謝酵素DGKαの触媒機構及び分子内活性化制御機構の構造基盤の解明
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19K06527
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高橋 大輔 九州大学, 薬学研究院, 助教 (70791523)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジアシルグリセロールキナーゼ / DGK / 構造解析 / EF-hand |
Outline of Annual Research Achievements |
脂質の変調が多様な疾患と連関することが明確になってきた.それら脂質の代謝酵素の一つであるジアシルグリセロールキナーゼα(DGKα)は,”がん細胞を増殖させるが,逆にT細胞の活性を減弱する”という生理学的にユニークな働きをもつ.このため,DGKαは,新規がん免疫創薬の標的として近年注目され,阻害剤のスクリーニングも進められてきた.しかし,細胞膜近傍の疎水的な環境で働くDGKの分子機構の詳細は,不明のままであり,合理的な阻害剤設計に必要なDGKの立体構造も未だ決定されていない.本研究では,DGKαの触媒機構,及び複数の制御ドメインによる分子内活性化制御機構を構造生物学・物理化学・生化学的手法により多角的かつ詳細に解析し,DGKαの構造基盤を明らかにする.本年度は,予定通り1. DGKαの構造解析のための全長DGKα試料の調製と結晶化スクリーニング,2. N末端制御ドメインの相互作用解析のための各ドメインの物性解析を進めた.
1.全長DGKα試料は昆虫細胞発現系により大量に発現し,固定化金属イオンアフィニティー・ゲル濾過クロマトグラフィーにより精製し,結晶化スクリーニングを行った.
2.N末端制御ドメインに関しては,RVH,EFドメインのカルシウム存在下・非存在下での特徴づけを行った.これまでEFドメインへのカルシウム結合は明らかになっていたが,今回等温滴定カロリメトリーによる解析により,RVHドメインもカルシウム結合能をもつことを明らかにした.しかしながら,トリプシン限定分解・ゲル濾過クロマトグラフィー・ANSを用いた蛍光スペクトル解析により,カルシウムの結合によりコンフォメーション変化を起こすのは,これまでの報告と一致して,主にEFドメインであることも示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶化に必要な全長DGKα試料を大量調製し,結晶化スクリーニングを始めることができた.今後さらに条件を検討し,スクリーニングを進めれば,未だ決定されていないDGKαの構造解析のための結晶を得ることができると考えられる.また,同時に,生化学的・物理化学的手法(限定分解,重水素交換質量分析)を用いて,カルシウム結合型(活性化型),非結合型(不活化型)のコンフォーメンションを解析するための試料も調製できたので,今後解析を進めていく.
RVH, EFドメインそれぞれの特徴づけを進めることができた.またカルシウム結合型RVH-EF試料について結晶を得られたため,構造解析のための結晶化条件の最適化を進めている.またもう一つの制御ドメインC1についても試料の調製を進めている段階である.今後これらのRVH, EF, C1の制御ドメイン,全長DGKαを用いて,ドメイン間の相互作用解析を進めていく.
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Strategy for Future Research Activity |
全長DGKαの構造解析が本研究の最重要課題であるため,結晶化スクリーニングを優先して進めていく.同時に,結晶化が進まない場合を考え,重水素交換質量分析によるコンフォーメンション解析,X線小角散乱による分子形状解析を進め,DGKαの構造に関して可能な限り多くの情報を得る.N末端制御ドメインに関しては,カルシウム結合型RVH-EFドメインの構造解析,分子内相互作用解析を引き続き進めていく.2020年度からは脂質との相互作用解析のためのナノディスクの調製にも着手する予定である.
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Causes of Carryover |
年度末の学会の中止になったため.2020年度も引き続き,DGKaの構造解析・相互作用解析のために必要な試薬類の購入,成果発表のための使用を予定している.
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Crystal structure and calcium-induced conformational changes of diacylglycerol kinase α EF-hand domains.2019
Author(s)
Takahashi, D., Suzuki, K., Sakamoto, T., Iwamoto, T., Murata, T., and Sakane, F.
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Journal Title
Protein Science
Volume: 28
Pages: 694-706
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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