2019 Fiscal Year Research-status Report
がんエクソソームの分泌におけるワールブルグ効果の役割の解明
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19K06546
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Research Institution | Osaka International Cancer Institute |
Principal Investigator |
原田 陽一郎 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 糖鎖オンコロジー部チームリーダー (80464147)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エクソソーム / がん / ワールブルグ効果 / 糖鎖修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞が分泌する「エクソソーム」は、がんの進行を促進する因子である。研究代表者は、がん細胞の糖代謝で重要な「ワールブルグ効果(好気的解糖系)」が、がん由来エクソソーム小胞の分泌に果たす役割を明らかにする目的で、ヘキソキナーゼ (HK) の阻害剤である2-deoxyglucose (2-DG) を用いて細胞を処理した。その結果、がんエクソソームの分泌量が減少することがわかった。しかし、実験に用いたがん細胞に発現する主要なHKをノックダウンしても(HK活性で80%減弱)、がんエクソソームの分泌量は減少しなかった。このことから、2-DGはワールブルグ効果の阻害ではなく、他の経路を阻害する事でエクソソームの分泌を抑制することが示唆された。この点に関して、2-DG処理によって起こる細胞内糖代謝経路の変化を詳細に解析した結果、2-DGはN結合型糖鎖修飾を阻害することによって小胞の分泌を抑制することがわかった。さらに、2-DGによって分泌抑制される小胞内の積荷タンパク質を解析した結果、bona fideエクソソームの積荷タンパク質であるテトラスパニンタンパク質(CD9, CD63, CD81)は変化しないが、Met, Adam10, Lamp1, tyrosinaseなどのタンパク質の分泌が大きく減少した。このことから、2-DGは、N結合型糖鎖修飾を阻害することによって、がん細胞から分泌される非エクソソーム小胞を抑制することがわかった。 この結果を受け、今後、非エクソソーム小胞の分泌制御に関わるN結合型糖鎖修飾酵素の同定を行うとともに、分泌制御機構を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初、ワールブルグ効果が、がんエクソソームの分泌制御に関わると仮説していた。しかし、予想に反してN結合型糖鎖修飾が非エクソソーム小胞の制御に関わることがわかった。この結果を受け、研究計画を修正し、N結合型糖鎖修飾による非エクソソーム小胞の分泌機構の一端を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に述べたように、研究開始当初の仮説とは異なる結果が出てきたため、今後の研究計画を以下の通り設定する。①非エクソソーム小胞の分泌に関わるN結合型糖鎖修飾酵素の同定;②N結合型糖鎖修飾による非エクソソーム小胞の分泌制御メカニズムの解明。
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Research Products
(5 results)