2019 Fiscal Year Research-status Report
Mrp型Na+/H+アンチポーターを標的とする新規黄色ブドウ球菌生育阻害剤の開発
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19K06549
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
伊藤 政博 東洋大学, 生命科学部, 教授 (80297738)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Mrpアンチポーター / 黄色ブドウ球菌 / Na+/H+アンチポーター / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究対象であるMrp型Na+/H+アンチポーターは、多くの細菌や古細菌に普遍的に存在する(Ito et al, Front Microbiol, 2017)。また、細菌感染症を引き起こす黄色ブドウ球菌や緑膿菌では、mrp欠損株がマウスへの感染率と病原性の低下を引き起こすことこが報告されている(Vaish et al, J Bacteriol, 2018; Kosono et al,J Bacteriol, 2005)。このようにMrpは、感染症や多剤耐性菌予防の有望なターゲットタンパク質として注目されている。研究代表者は、これまで黄色ブドウ球菌や好アルカリ性細菌由来のMrpの機能解析を行ってきた。そこで、創薬研究にも直結する黄色ブドウ球菌由来のMrpを用いて、このNa+輸送経路に特異的な阻害剤を探索するため、低分子化合物ライブラリーを活用して特異的な阻害剤の探索及びその作用機序の解明を本研究の目的とした。2019年度は、下記のテーマ1と2を行った。 テーマ1ではNa+/H+アンチポーターを欠損させた大腸菌KNabc株に、黄色ブドウ球菌由来のmrp遺伝子を発現させ、Na+耐性の差を利用する阻害剤探索を96穴マイクロプレートを用いたハイスループットスクリーニング系で実験した。約11,000種の低分子化合物ライブラリーからKNabc/mrp株が生育阻害を受けるかどうかを指標にスクリーニング系の評価を行い、ヒット化合物を探索した。テーマ2では、Mrpを発現させたKNabc株から反転膜を調製し、反転膜と蛍光pH指示薬を用いた蛍光消光法によるNa+/H+アンチポート活性を指標にテーマ1のヒット化合物の添加の有無でMrpのアンチポート活性が特異的に阻害を受けているかを検証した。現在、テーマ1の結果をもとに候補化合物を選抜する途中まで進んでいる。次年度以降もこれを推進する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に予定した実験テーマに沿って研究が進められているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、黄色ブドウ球菌由来のMrp型Na+/H+ アンチポーターを特異的に阻害する阻害剤の発見と阻害剤の作用機序の解明、更には阻害剤の最適化を最終目標としている。 2020年度は、2019年度に行ってきた研究の推進と実際に黄色ブドウ球菌に対する阻害効果のある候補化合物の検証を行う。また、マウスを用いた細菌感染実験に向けた事前の準備も行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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