2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K06554
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
渋谷 典広 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 准教授 (40466214)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 硫化水素 / 多硫化水素 / 3MST / CAT / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、硫化水素や多硫化水素(ポリサルファイド)が生理活性物質として注目されている。最近では、細胞内のシステインやグルタチオン、あるいはタンパク質が過硫化型や多硫化型としても存在することが明らかとなっている。これらは、反応性に富んだ分子種であり、抗酸化作用や抗炎症作用など細胞保護的に機能することが明らかとなりつつあるとともに、それ以外にも様々な反応に関与すると考えられる。 既に我々は、3-メルカプトピルビン酸硫黄転移酵素(3MST)が過硫化物や多硫化物を産生することを見出し、これまでの検討から3MSTをノックアウトすることで脳、肝臓や腎臓において過硫化物や多硫化物が低下することを見出している。本年度は、従来までのマウスの組織を用いた解析に加えて、株化培養細胞を用いて過硫化物や多硫化物の定量解析を行った。過硫化物や多硫化物の内在量をジチオスレイトール還元することで放出される硫化水素を指標として解析したところ、3MSTの基質3-メルカプトピルビン酸を供給するミトコンドリア型システインアミノトランスフェラーゼ(CAT)の存在量と相関関係が認められた。一方、サイトゾル型CATとの相関関係は認められず、ミトコンドリア内のCAT-3MST経路が過硫化物や多硫化物の産生に寄与していることが示唆された。ミトコンドリアにおける機能障害は、酸化ストレスを惹起するとともに神経変性疾患等を発症すると考えられている。今回の結果から、ミトコンドリア型CAT-3MST経路を介して産生された過硫化物や多硫化物が細胞保護作用を発揮するうえで重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プラスチック製品の欠品にともない、細胞培養のための準備(細胞の購入、プラスチック製シャーレやピペット類等のセットアップ)ならびに実験遂行に要する試薬類の購入に遅延を生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
各種培養細胞を用いた結合型硫黄に関する定量解析を継続する。また、酸化ストレスに対する過硫化物や多硫化物ならびにミトコンドリアにおけるCAT-3MST経路が細胞保護的に作用する機序の解明を目指した解析を行う。 なお、過硫化物や多硫化物の定量に関しては、ジチオスレイトールの還元力が発揮されるアルカリ条件下(pH9.0)で行っているが、一部のタンパク質は変性していることが予想される。そのため、硫化水素やポリサルファイドの挙動を含めて正確に把握し切れていない可能性があることから、中性域での定量法の確立を目指した検討を目指す。
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Causes of Carryover |
培養細胞を用いた計画の遅延に伴い、細胞の購入費、プラスチック製シャーレやピペット類等のセットアップ費、試薬類の購入費として使用する。
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