2019 Fiscal Year Research-status Report
Do GTPase activating protein ArfGAPs perform "shipping inspection"?
Project/Area Number |
19K06557
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
芝 陽子 岩手大学, 理工学部, 准教授 (50755866)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ArfGAP / Arf / 選別 / 輸送小胞 / コートタンパク質 / 分泌顆粒 / vWF / HUVEC |
Outline of Annual Research Achievements |
ArfGAPファミリーは低分子量Gタンパク質Arfに結合したGTPを加水分解し, Arf-GDPにする酵素群である。Arf-GTPはクラスリンアダプターやCOPIのようなコートタンパク質をオルガネラ膜に結合させ, コート小胞を形成させる。ArfGAPはArf-GTPをArf-GDPへと不活性化させるため, これまで輸送を阻害する因子として考えられてきた。しかしながら, 芝はArfGAPが積荷の選別時にArf-GTPを加水分解し, 積荷とコートタンパク質の結合が正しいかどうか審査をする”出荷審査”を行っているという新規の小胞形成モデルを提唱している (Shiba et al, Cell Logistics, 2011, Shiba and Randazzo, Histol Histopath, 2012)。芝は本モデルをCOPI小胞形成の議論の中から提案したが, ポストゴルジのclathrin/GGA小胞にも適用できることを報告した (Shiba et al, Curr Biol, 2013)。これらの研究は積荷受容体であるp25やマンノース6リン酸受容体(MPR)といった膜貫通タンパク質の細胞質領域にCOPIやGGAが結合し,その結合がArfGAPに認識されると考えて行われたものである。しかしながら, 必ずしも積荷受容体でない志賀毒素Bサブユニット(STxB)が結合する糖脂質でもArfGAPが選別に関与していることを芝は報告している(Shiba et al, JCS, 2010)。本研究ではこれらの実績を踏まえ,積荷受容体がまだ見つかっていないが, Arf依存性クラスリンアダプター, AP-1が関与する止血因子von Willebrand Factor (vWF)の輸送に着目し, vWFのゴルジ体から分泌顆粒への輸送にArfGAPが関与しているかどうか研究を行った
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
vWFはWeibel-Palade Body (WPB)という葉巻型の特徴的な形態を持つ分泌顆粒を形成する。本研究では全てのArfGAPのsiRNAを用いてスクリーニングを行い,WPBの形態に影響を与えるArfGAPとしてSMAP1とAGFG2を同定した。昨年度は内在的にvWFを発現するヒト臍帯静脈血管内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells, HUVEC)を用いてSMAP1とAGFG2の機能解析を行った。 HUVECでSMAP1 Knockdown(KD)細胞ではWPBのサイズが短くなることが分かった。この結果がsiRNAのオフターゲットではないか確認するため, 遺伝子導入効率の良いHEK293細胞を用いてCRISPR/Cas9でSMAP1knockout(KO)細胞を作出した。SMAP1KO細胞でもGFP-vWFが形成する擬似WPBのサイズが小さくなった。HUVECにおけるマルチマー解析ではvWFの多量体形成には変化がなかった。透過型電子顕微鏡ではSMAP1KD細胞で小さいWPBが観察されたが, 内部に筋状のvWFの構造が観察された。このことからSMAP1は未成熟のWPBが成熟型になるのに関与していると考えている。 一方, AGFG2KD細胞では, WPBの形態の変化は見られなかった。しかしながら, Phorbol 13-myristate 12-acetate(PMA)で刺激をし, vWFの分泌量をELISAよって測定したところ, AGFG2KD細胞ではcontrolに比べて分泌量が低下した。このことはAGFG2はvWFのエクソサイトーシスに関与していることを示している。現在はsiRNA抵抗性のAGFG2遺伝子を作成し, AGFG2KDの表現型がsiRNAによるオフターゲットではないか調べている。
|
Strategy for Future Research Activity |
SMAP1とAGFG2の作用点を明らかにするためSMAP1とAGFG2の内在性の局在を明らかにする。またSMAP1とAGFG2の免疫沈降を行って結合する分子を明らかにしたい。 AP-1はvWFのゴルジ体からWPBへの輸送あるいは未成熟な分泌顆粒から不必要なリソソームの加水分解酵素などを取り除くことに関与する。SMAP1がその過程でvWFの選別を行う, と予測していた。しかしながら, SMAP1KDでもゴルジ体からWPBへの輸送は阻害されず,またSMAP1KDによって加水分解酵素の取り除きが阻害される場合は, WPBのサイズが大きくなると考えられるが, 逆にWPBのサイズが小さくなっている。現在のところ SMAP1の機能をAP-1の機能調節ではうまく説明できない。 SMAP1と AGFG2はどちらも真核細胞の共通祖先細胞でも存在していた古いArfGAPである(Schlacht et al, Traffic, 2013)。オルガネラの形成にはウィルスの侵入が関わっていたという説がある(Takemura, J Mol Evol, 2001, Bell, J Mol Evol, 2001, Forterre, ISME, 2013)。細胞が自ら合成した積荷ならばあらかじめ積荷受容体を合成して輸送小胞に積み込むのは理解できる。しかしながら未知の外敵が来る場合に宿主細胞が常に積荷受容体を準備できたのだろうか。細胞内へ侵入してきた外敵については,そのサイズや形態などがリソソームへの輸送シグナルになった可能性はある。WPBは2um以上のものもよくあり一見すると病原体のように見えるが, HUVECでは分解されずに残る。ArfGAPがWPBだけは分解せずに細胞内に留める, という機能を担っているかもしれない。今後はオルガネラの進化過程も見据えながら,ArfGAPの機能を解明していきたい。
|
Research Products
(4 results)