2021 Fiscal Year Research-status Report
細菌Ⅲ型分泌装置構成因子が受ける新奇な翻訳後多段階プロセシングの分子機構
Project/Area Number |
19K06562
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
檜作 洋平 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (70568930)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸菌 / べん毛 / Rhomboid / 膜内切断プロテアーゼ / 基質認識機構 / 抗体標識 / PAタグ / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者が見出した細菌べん毛III型分泌装置構成因子FliOの翻訳後多段階プロセシングについて、「切断」と「修飾」の二点の解析を通して膜タンパク質の新たな翻訳後機能調節機構にアプローチするものである。本年度は、FliOのin vitroでの切断・修飾解析に向けて必要となるタンパク質のタグ標識と精製技術の確立のため、タンパク質の抗体ラベリング技術の改良を試みた。京都大学ウイルス・再生医科学研究所(2022年4月より医生物学研究所に改称)の秋山芳展教授、横浜市立大学大学院生命医科学研究科の禾晃和准教授らとの共同研究により、目的のタンパク質に高親和性・高感度のタグ配列PAタグを導入し、PAタグに対する抗体を結合させる技術を開発した。さらにタグ配列やリンカー領域を調整し、タンパク質の構造に与える影響をより低減させたタグの導入法を確立した。こうしてタグを導入した酵素タンパク質は、元のタンパク質と同等の酵素活性を保持し、さらに安定なタンパク質として蓄積することを明らかにした。本技術は従来では直接結合する抗体がなかったタンパク質に非破壊的に特異的な抗体を結合させることを可能とし、高収量・高純度のタンパク質精製だけでなく、X 線結晶解析や電子顕微鏡単粒子解析などの構造解析にも応用できる可能性がある。この内容を学術論文にまとめ、科学誌「Acta Crystallographica Section D, Structural Biology」に発表した。この技術を応用し、FliOやFliOを切断・分解するプロテアーゼであるGlpGにPAタグを導入することで、高感度で目的タンパク質を検出することを可能にした。さらにこれらを用いてFliOのin vivo切断解析、パルスチェイス動態解析や酵素―基質間相互作用解析を進展させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究は、研究実施計画の項目(A):膜内切断プロテアーゼGlpGによるFliOの「切断」の構造学的、酵素学的解析と、項目(B):FliOの新奇な「N末端アシル化修飾」の実体解明の二点から構成される。本年度は項目(A)、(B)に共通するin vitroでの切断・修飾解析のために必須となるタンパク質精製の高効率化・高純度化を目的とし、【研究実績の概要】に示した成果を得た。本成果は高親和性・高感度のPAタグを改変して目的タンパク質に付与することで、構造に与える影響を低減しつつ、特異的抗体による高純度のアフィニティ精製や、高感度のタンパク質検出を実現するものである。実際に本研究計画の対象となるFliOやプロテアーゼGlpGにPAタグを導入し、高感度でのタンパク質検出が可能であることを実証し、さらにin vivoでの機能解析や動態解析、相互作用解析に応用できることを確認した。この点で本研究計画の項目(A)、(B)の遂行のために必須となるタンパク質精製法の確立に向けて前進するものであり、in vitro解析に向けて着実に進展していると判断する。 なお、本年度の特筆すべき事情として、本申請研究とは独立に遂行している他の膜内切断プロテアーゼの構造解析で大きな進展があり、そちらに研究エフォートを割いたため、本申請研究の年次計画の見直しを行った。また、昨年より本格化した新型コロナウイルス感染症の対策のため、引き続き学会や研究会の参加も含めた研究活動に制限が掛かったことを考慮すると、現時点では十分な進捗状況であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】の項目で記載した通り、今年度は他の研究プロジェクトの進展との兼ね合い及び社会情勢の影響から、申請当初の計画から若干の遅れが生じたため、補助事業期間の延長を申請し、承認された。本申請研究の最終年度となる次年度は、まず項目(A)のGlpGの新奇生理的切断基質としてのFliOの基質認識・切断機構の解析の完遂を目指す。学術雑誌に論文として投稿・発表することを見据え、研究成果を取りまとめる方向で引き続き研究を進める。既に学術論文のコアとなる実験結果は得られつつあり、さらに本年度の研究により進展したin vitro解析をさらに着実に推進する。具体的には基質認識モチーフや推定基質結合領域(exosite)の変異体を用いた機能解析や、新規アフィニティータグを利用した共免疫沈降解析等の生化学解析による相互作用解析等を行う。さらに、項目(B)のFliOの新奇な「N末端アシル化修飾」の実体解明に向け、FliOの細胞膜外でのN末端アシル化修飾を促進する未知の修飾酵素の同定や、遺伝学的解析によるFliOのN末端アシル化の分子機構及び生理的意義の追及を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度の使用状況:特筆すべき事情として、昨年度に引き続き、新型コロナウイルスに対する感染対策のため、学会・研究会の参加費・旅費や、研究打ち合わせに掛かる出張費等が大きく縮小された。(物品費)今年度はタグ改変した変異体を用いた遺伝学的・生化学的解析やタンパク質精製が主となり、研究室の保有機器及び保有試薬、消耗品、研究所の共同利用機器等を使用することで物品費を抑えつつ研究を遂行した。(旅費)ウイルス感染対策として参加を予定していた学会・研究会が中止、あるいはWEB開催となる等したため、使用額が減少した。共同研究の打ち合わせ等もWEB会議が主となり、出張関連費等の使用額が減少した。(その他)変異体構築用のオリゴDNA合成委託や、シーケンシング解析委託に掛かる費用を主として計上した。 次年度の使用計画:(物品費)研究の進捗状況により、in vitro切断・修飾解析に必要な精製関連試薬や無細胞タンパク質合成キット等、パルスチェイス解析におけるタンパク質標識用の放射性同位体標識メチオニン等、免疫沈降実験に用いる抗体(PAタグ抗体等)等の購入費を計上する。(その他)in vitro切断アッセイに用いる蛍光標識ペプチドの合成委託費、オリゴDNA合成委託やシーケンシング解析委託費を計上する。学術論文作成・投稿のため、英文校閲費や論文投稿料を計上する。
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Research Products
(6 results)