2022 Fiscal Year Annual Research Report
PP1を介したRaf-1シグナルのロバストネス制御の動作原理とその生物学的意義
Project/Area Number |
19K06573
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
江藤 真澄 岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (20232960)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ホスファターゼシグナル / プロテオステーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的は1型Ser/ThrホスファターゼPP1の細胞内調節タンパク質PHI-1が如何に Raf-1が担う細胞増殖・死シグナルを制御しているかを明らかにし、これら経路の応用への基盤を確立することである。予定された3年目までにPHI-1がRaf-1のプロテオステーシスを調節していることを明らかにした(Eto et al in preparation)。最終年度にはPHI-1の細胞内PP1調節経路をさらに明らかにするためにPHI-1細胞標的を網羅的に探索した。本研究より明らかとしたPHI-1が高発現しているヒト子宮平滑筋肉腫細胞より、siRNAを用いてPHI-1をノックダウンしたところ、アポトーシスを伴わずに細胞増殖をおさえることが明らかになった。PHI-1ノックダウンの影響を網羅的に明らかにするためにマイクロアレイ法でRNA転写の増減を解析した。細胞増殖の低下に伴って、負の増殖シグナル遺伝子の著しい増加と生の増殖シグナル遺伝子の著しい増加が観測され、PHI-1の下流にはこれらの遺伝子が関与し、細胞増殖を調節していることが明らかとなった。一方、マイクロアレイ解析で増減が認められた遺伝子群の上流解析をChEA3アルゴリズムで解析したところ、新しい細胞増殖シグナルの関与が確認され、このシグナルがPHI-1ノックダウンによって影響を受けることを立証できた(Eto et al in preparation)。加えて、PHI-1のホモログであるCPI-17を用いた解析では、今回新たに、細胞内におけるPP1の相互作用には阻害に必須な相同性が高い領域(PHINドメイン)だけではなくN-/C-末端側の非構造領域も必須であることを明らかにした(Eto et al JSMR 2022)。以上の結果より、推定していたシグナル経路に加えて複数の細胞機能にPHI-1が関与していることが明らかになった。
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