2020 Fiscal Year Research-status Report
Dynamics analysis of virus entry and budding by high speed AFM
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19K06583
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
臼倉 英治 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00643727)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 電子顕微鏡 / 高速走査型原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はインフルエンザウイルス(以下IAV)の細胞への侵入から出芽にいたるまでの過程を高速走査型原子間力顕微鏡(以下高速AFM)や電子顕微鏡を用いて分子レベルで明らかにすることを目標としている。2年目は、v-RNP、M1タンパク質に抗原抗体反応を利用して金コロイドや蛍光マーカーを修飾し、出芽する時期にIAVを構成するタンパク質が細胞膜の裏打ち構造でどのように集積するかを明らかにすることを目指した。実験では、カバーガラス上で培養しIAVに感染した細胞にアルシアンブルーで帯電させた別のカバーガラスを被せ、グルタールアルデヒドで固定させつつ細胞のアピカル側を剥がした。これにより、細胞のアピカル側の裏打ち構造を観察できるようになる。その後、v-RNPやM1タンパク質に抗原抗体反応を利用して金ナノ粒子を修飾し、白金やカーボンを蒸着してレプリカにして電子顕微鏡で観察を行った。その結果、v-RNPは細胞膜の裏に広く分布しており、膜裏のアクチンフィラメントに沿うように存在していた。一方で、M1タンパク質は、細胞膜の裏にクラスター構造を形成している様子が見られた。さらに、M1タンパク質にAlexa568を修飾し高速AFMと蛍光顕微鏡の同時相関観察を行うことでもクラスター構造がM1で形成されていることが確認できた。また、電子顕微鏡を用いた観察中に、出芽の際に、IAV一つずつではなく、チューブ状に膜の中にIAVを多く含んでいる思われる状態の構造も観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目の実験では、インフルエンザウイルスがどのように出芽するかを細胞の細胞質側から電子顕微鏡を用いて観察することができた。今回の実験から、出芽直前にM1タンパク質は細胞膜裏でクラスターを形成すること、v-RNPが細胞膜直下で多く存在すること、v-RNPが膜の裏打ちでアクチンフィラメントと関わりがあることが判明した。一方で、インフルエンザウイルス由来のタンパク質、あるいは輸送や出芽などに関係するタンパク質の特定やそれらのタンパク質への阻害剤を用いた時のインフルエンザウイルスの応答の観察などを行うことが十分にできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
プログラム最終年度は、2年目に十分にできなかった阻害剤を用いた時のインフルエンザウイルスの応答の観察や生化学的実験による評価、または高速走査型原子間力顕微鏡で得られた画像の解析を中心に行っていく予定である。そして、得られた結果を雑誌に投稿して世の中に発信していくことも目指していく。
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Causes of Carryover |
自身の仕事場が名古屋大学から京都大学へ移り、そこで新たな実験環境を整える必要があった。また、それに伴う事務的応答で手間取ったこともあり、その期間は実験の遂行が滞ってしまった。さらに、昨年度から引き続き、covid-19の影響で学会や研究会に参加することができなかったことが次年度使用額が生じた理由につながる。プログラム最終年度は、引き続き消耗品の購入や論文投稿に助成金を使用していく予定である。加えて、covid-19による世間の状況が改善されれば、学会や研究会への参加も積極的に行っていきたい。
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