2019 Fiscal Year Research-status Report
光制御型転写因子を用いた光情報の変換と伝達機構の解明
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19K06586
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久冨 修 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60231544)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光情報変換 / bZIP型転写因子 / LOVドメイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、代表者らが開発した光制御型転写因子(光ジッパー、略称PZ)の解析を通じて、光情報の変換と伝達の過程を明らかにすることを目的とするものである。代表者らはPZの光情報変換機構を解明するために、LOVドメインに様々な部位特異的変異を導入し、熱安定性、光反応、二量体化、DNA結合性の解析を進めてきた。2019年度は、LOVドメインに共通して存在するグルタミン酸(Q317)を置換したPZ変異体や、F298置換したPZ変異体を、動的光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲルシフトアッセイ、水晶振動子微小天秤(QCM)法などにより定量的に解析した。Q317変異体では、暗明それぞれの状態で単量体型と二量体型が共存することが示された。タンパク質濃度に依存して単量体型と二量体型の存在量が変化したことから、それらが平衡にあることが明らかになった。逆説的には、Q317が暗状態で単量体型、明状態で二量体型を安定化していることになる。また、F298をはじめとした他のアミノ酸も協同的にLOVドメインの構造変化に関与することで、PZが優れたスイッチング特性を示すことが明らかになった。さらに、PZの二量体化と標的DNA配列への結合性に相関があることが示されたことから、「光はQ317など複数の残基の変化を経由してLOVドメインの構造変化を誘起し、PZが二量体化して標的配列への結合性が増大する」という機能のメカニズムが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者らが取り組んできた、動的光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲルシフトアッセイ、水晶振動子微小天秤法などのシステムを用いて、部位特異的変異体を定量的に解析することができた。その結果、PZの二量体化と標的DNA配列への結合性に相関があることが明らかになった。このように、オーレオクロームの基本的な機能メカニズムを示唆することができたことから、本年度は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、光受容により大きく構造変化することが示唆されているLOVドメインのN末側のヒンジ領域と、βシート背面の疎水領域を重点的に解析する予定である。また、basic領域の塩基配列特異的な水素結合に関与するアルギニン(R139)、および var der Waals 相互作用に関与するアミノ酸などを置換して、転写因子複合体の結合・解離速度定数のそれぞれに影響を与えるアミノ酸残基を同定していく。また、標的塩基配列に変化を与えた場合の結合・解離速度定数も測定して、転写因子複合体形成の動的機構を明らかにする。さらに、応募者らは、c-JunやMaxのDNA結合領域をPZのZIP領域と連結したキメラ変異体を作成して、それらが光可逆的に標的配列への結合性を増すことを明らかにしているので、それらキメラ変異体についても同様な解析を行う予定である。
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Research Products
(11 results)