2021 Fiscal Year Research-status Report
時空間相関イメージングによる細胞内遺伝子デリバリー機構の全容解明
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19K06590
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
佐々木 章 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30580162)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 画像相関分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、レーザー共走査型共焦点顕微鏡のタイムラプス測定画像(生データ)を取得し、分子拡散由来のシグナル(蛍光強度揺らぎ)とオルガネラ等の構造体のシグナルを分離した状態において、画像相関法等を用いて、通常のイメージングにおける蛍光強度分布の情報に加えて、共局在度、構造体の移動方向、核酸分子の分解度、 DNA認識タンパク質との相互作用、分子数、複合体形成のような高次情報を抽出し、さらにそれらの情報を統合することを目的としている。 また、細胞内に導入されたDNA分子の分解をターゲットとし分解に関与する因子の同定や機能解明を目指している。 今年度は時空間相関イメージングの基礎となる画像相関法の基盤技術の検討を行った。具体的には、画像相互相関法(Image cross-correlation spectroscopy)の原理により、画像の共局在性を定量的に解析する方法について検討した。試料として、任意の距離を隔てて2色で蛍光標識されたDNAオリガミ分子を設計し、標識間の相関を定量化して2色間の共局在性を判別する技術を構築した。画像相関を実施する際に必須となる、顕微鏡の正しい調整やキャリブレーションに使用する標準試料に関する情報をまとめた総説論文を発表した。また、本技術をDNAのみならず細胞内のRNAに展開していくための技術として、蛍光アプタマーを活用した蛍光相関解析の検討を行った。蛍光RNAアプタマーであるBroccoliと蛍光基質(DFHBI-1T)の結合乖離やそれによる蛍光強度の増大、蛍光相関測定への適用における基本的性質の検証などを行い、論文成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定システムと要素技術の構築に関しては着実に進展しており、成果につながってきている。顕微鏡システムの不調などもあり細胞内でのデータを用いた高次イメージングデータ統合の実証には未だ至っていなかったため、1年間の研究期間の延長を行った。その後高次イメージングデータ統合のための基本技術の構築に目処が立ちつつあることから、期間延長後の進捗状況としてはおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
高次イメージング情報の統合と原理証明を加速し、細胞内での解析に供せる段階に到達させるため、所属機関内での連携を引き続き強化する。画像相互相関法による共局在の評価技術は高次イメージングのベースになるものであり、論文化を急ぐ。本研究で細胞内での計測を行うための超解像顕微鏡は非常に高精度に調整することが必要であり、測定ごとに機器の性能を確認し最適な状態を保つためのストラテジーの確立も引き続き取り組むべき課題である。
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Causes of Carryover |
1年間の研究期間延長を行なったため、そのための次年度使用額が生じている。具体的には、昨年度までに遅れが生じていた画像相関法の実証に用いる試料の作製に係る試薬等の費用に一部残額が発生した。また、当初予定において導入する予定であった機器が、購入せずとも所属機関内で調達することができたため、その分の費用は研究を加速するための別の機器の調達で有効に活用するほか次年度に先送ることとした。一方でシステムの安定性やデータの比較互換性を担保するための ストラテジー開発や標準試料の調達に当初想定していなかった費用が発生しており、次年度は消耗品を中心にを当初の計画に沿いつつ有効に活用する予定である。
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