2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06601
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
柴山 修哉 自治医科大学, 医学部, 教授 (20196439)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヘモグロビン / アロステリー / 酸素親和性 / MWCモデル / 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
脱酸素型T状態ヘモグロビン(Hb)の酸素親和性は溶液条件に依存して40倍以上変化することが古くから知られているがその構造的基盤はまだわかっていない。T状態Hbの酸素親和性変化と良い相関を持つ構造プローブとしてβ鎖93番システインSH基の反応性がある。その理由は、隣に位置するβ鎖94番アスパラギン酸が同じβ鎖C末端146番ヒスチジン(Bohr効果に関与するアミノ酸残基)の側鎖イミダゾール基と相互作用することでβ鎖C末端とα鎖40番リジン間に形成されるT状態塩橋を安定化するためと考えられている。そこで当該年度は、酸素親和性の異なる脱酸素型Hbを溶液ごと透明な多孔性シリカゲルのゲルマトリックス中に閉じこめ状態間遷移を凍結した状態での酸素平衡曲線の測定とβ鎖93番システインSH基の反応性の測定を並行して行った。 最低酸素親和性を持つデオキシHbは、強力なアロステリックエフェクターであるイノシトール6リン酸(IHP)を溶液に加えることで調製した。また、比較的高い酸素親和性を持つデオキシHbは、塩素イオン等のエフェクターが全く存在しない溶液条件を用いることで実現した。 最低酸素親和性を持つデオキシHbの酸素平衡曲線とSH基の反応性は、両者とも単一構造状態を仮定したモデルでうまくフィットすることができた。この酸素親和性はT構造デオキシHb結晶の酸素親和性と一致した。一方、比較的高い酸素親和性を持つデオキシHbの酸素平衡曲線とSH基の反応性は、両者とも顕著な二相性を示した。このうちの約80%を占める状態の酸素親和性親和性とSH基の反応性は、上の最低親和性T状態の値と一致した。一方、残り約20%を占める未知の構造状態は、最低親和性T状態と比較して、それぞれ約100倍の酸素親和性と約50倍のSH基の反応性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルス感染防止のための研究制限要請に従い、当該年度前半に予定していた研究の一部で進行の遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験データはほぼ出そろったので、多孔性シリカゲルを用いた状態解析の結果と結晶の酸素平衡曲線の結果とを合わせて、ヘモグロビンがとりうる機能状態の数と性質を明確に洗い出す。また、これらの結果をまとめて論文の作成を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度前半にコロナウイルス感染防止のための研究制限と出張制限があったため、物品費と旅費の支出が予定より減少した。繰り越し分は、次年度に持ち越さ れた研究課題を進めるための物品費、旅費、および、論文発表用の経費等に充てる。
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Research Products
(2 results)