2019 Fiscal Year Research-status Report
Flexibility and plasticity of the tubulin lattice within assembled microtubules
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19K06602
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
上村 慎治 中央大学, 理工学部, 教授 (90177585)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 微小管安定化剤 / GTPアナログ / リン酸アナログ / タキソール誘導体 / 微小管構造動体 / X線繊維回折 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小管は,細胞の形態・運動・分裂増殖・細胞内輸送等に関わる重要な細胞骨格であり,微小管構造を安定化する薬剤は,チューブリンダイマーへの脱重合を抑え細胞分裂を停止させるため,有力な抗がん剤候補となる。微小管構造の可塑性やゆらぎの度合いを定量的に記述できる良い方法があれば,微小管構造を安定化するしくみ,および,その時のチューブリン分子の状態を正確に理解できると期待している。本研究は,X線繊維回折法によって微小管構造の動態を調べ,低濃度でも効果的に作用する微小管安定化剤を探る研究へと展開することを目標にしている。 2019年度は,予定されていた以下の2つの実験を実施した。一つは,精密な信号位置解析から構造のゆらぎを調べる実験(ALBAのBL11/ncdを使用),もう一つは,秒単位の高速な構造変化を解析する実験(SPring-8のBL05XUを使用)である。両方とも,配向させた微小管からの高精度の回折パターン記録に成功し,以下の2つの点で重要な結果が得られた。 (1)GTP加水分解過程に伴う構造変化:共同研究者のDiaz研究室(CSIC)では,GTPやリン酸アナログを使ったGTP加水分解中間状態の構造解析を行っている。同様の溶液条件下でGDP/Pi状態のチューブリンに相当する構造が確認できた。 (2)微小管安定化剤添加による急速な構造変化の検出:タキソール誘導体やラウリラマイドはチューブリンに直接結合し構造変化を引き起こすが,この構造変化が30秒以内に起こることが以前の報告で明らかになっている(2016)。この構造変化を可能な限り高い時間分解能で検出する実験を実施した結果,薬剤による違いはあるものの,1~3秒以内に構造変化が起こること,タキソール誘導体は主に長軸方向の長さ変化,ラウリラマイドは主に微小管径の変化を引き起こすことがわかった。より詳しい時間経過を現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SPring8のSAXSビームラインBL05XUを使用し,高精度の微小管繊維回折像を収集できた。特に,リン酸アナログ,GTPアナログ存在下での構造を調べることで,微小管構造の動態,特にGTP加水分解時の構造変化を調べることができた。これにより,共同研究を計画しているスペイン側グループ(Diaz et al.,2020, in press)で行った生化学的な実験,X線結晶解析の結果との整合性を確認できた点は大きな進展である。加えて,高速の構造変化をより高い精度で捉える実験も計画しており,これは装置の開発を中心に行って来た。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,急速な温度低下に伴う構造変化を追跡するための装置を開発し,実験に応用する計画である。この装置によって,微小管研究者にとって長年の謎であった重要な問い,「低温で微小管の脱重合が急速に進行するのは,重合・脱重合の反応が単に脱重合側に偏るためのものか,あるいは,微小管が低温で構造変化し,それが脱重合を促進するのか」という問いに答えることができると期待してる。合わせて,開発した装置を使い,微小管安定化剤の存在下での温度特性解析へと進めたい。
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Causes of Carryover |
高速の構造変化,特に精密な温度制御下の構造解析を行うための新しい部品設計を行ったために,その設計図の作成・修正を特注先の企業と2019年年末から新年度にかけて実施した。制作費に経費が必要となると予測されたために,費用の一部を2020年度に融通することにした(参照サイト:2020年度6月に完成した新規部品,https://www.nogatadenki.jp/works/834)。
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