2020 Fiscal Year Research-status Report
目的生物由来微量タンパク質に対する新規協同的構造変化解析法の確立と展開
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19K06604
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
山本 竜也 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 研究員 (70437573)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タンパク質 / 動的構造解析 / 重水素交換 / 質量分析 / 解析ソフトウェア |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質構造やその変化は機能と密接な関係にあるが、活性を含む定量的なデータを十分に説明できていない。主な理由は、現在の構造解析が本来とは異なる生物を使った大量発現系を用いていること、それに付随した翻訳後修飾情報の喪失、溶液構造解析可能な対象が少ないこと、複数タンパク質の一斉解析が困難であることなどである。それらを克服するため、申請者は微量かつローカルな構造変化を捉えることができる質量分析法とH/D交換(HDX)を使った新しい切り口による手法開発を続けてきた。 大きな構造変化が活性に大きく寄与することが分かっているAdenylate kinase1(AK1)の精製試料を使ってHDXクラスター解析を用いた実験を開始した。この実験は構造の動きを水素クラスターの変化を通じて観察することで酵素機能に必須な構造変化の解明を目指すもので、実験結果を基に新しい解析手法であるHDXクラスター解析の解析ソフトの一般化と高度化(高速化、自動化、新アルゴリズム実装)を進めた。MALDI-MSを用いたHDX実験によってAK1の構造変化情報を8つの領域に分割し、取得することができる。2019年度までは各領域内で協同的に溶媒水素と交換するアミド水素(クラスター)を割り出すことで構造変化をより詳細にとらえることに成功していたが、本年度からさらに高度な複数領域間でのクラスターを検出するアルゴリズムの開発を開始した。本開発を進める中、HDX実験で得られる2つの情報(溶媒露出度と同じ速度で交換する水素クラスター)のうち露出度は協同的なパラメーターではなく個別のパラメーターとして扱う方がより解析精度が上がることを見出した。すなわち露出水素割合は各水素の構造的な配座環境に依存していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ感染拡大により実験時間が大幅に制限されたが、その時間を解析アルゴリズム開発に使うことで研究を遅延なく進めることができた。具体的には新しい研究手法であるHDXクラスター解析の一般化と高度化の一端としてソフトウェア開発を行っており、MALDIイオン化を用いたHDXの一般的な解析までの部分をフリーソフトウェア”ScipasDX”(java言語使用)としてリリースし随時改良している。AK1の実験値を使いながら解析法の問題点を探索する中でHDXのモデル化の問題点を的確に把握し、タンパク質内の各水素の露出に対する独立性を考慮する必要があることが分かった。また最新型のMALDI型質量分析計は、高精度測定可能なReflectronモードでの測定可能な質量範囲が拡張され5000Da程度まで高精度に検出できるようになったため、本研究で開発中の解析法の適用範囲が大幅に拡張され、それらに対応したソフトウェアの改良も開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
新しい研究手法であるHDXクラスター解析の更なる高度化と一般化を進める。複数データセットのスワッピングを利用してデータ数を増やすことで結果の信頼性を上げたり、計算そのものの実行をコマンドからヴィジュアル主体にしたりすることで一般化を推し進める。コロナ感染拡大で実験の大幅な制限が予測されるが、本来の発展的な目標であった「複数領域間での水素クラスターを検出するアルゴリズム開発」を先回りして進めることで目標達成を目指す。2021年度は上記の新アルゴリズムを完成させ実際の測定で検証実験を行う。 その結果として結晶構造が分かっているものについては、立体的に隣にある者同士で同時解析することで協同的に動く水素のクラスター数とそれぞれの水素数がわかり、それぞれの交換速度や溶媒露出度からタンパク質全体の動きが三次元的に推定できるようになる。一方で結晶構造が分かっていないものや領域については、様々なフラグメントを総当たりでクラスター解析することで距離情報に近いものが得られ、トポロジーの推定を通じて立体構造の予測が可能となる。そのことはタンパク質間の相互作用メカニズムについても立体的な議論が展開できるようになることを意味する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大による実験時間の制限や試薬やキットの遅延を受けて、2021年度に行う予定だったソフトウェア開発を本年度に前倒しして行ったため、実験関連の購入が一部2021年度に移った。
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Research Products
(5 results)