2019 Fiscal Year Research-status Report
3D structural analysis of centromere in vertebrate cells
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19K06611
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西村 浩平 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (80582709)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | セントロメア / 核内構造 / AID法 / Hi-C |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝情報を担う染色体の正確な分配は、細胞増殖に不可欠な現象であり、生命の基本原理とも言える。セントロメアは、細胞分裂期に染色体分裂の要となるキネトコア(動原体)の形成部位として知られている。一方、セントロメア領域は、細胞分裂期のみならず間期の核内構造の中でも特殊なゲノム配置をもつと考えられてきた。しかし、セントロメア領域の反復配列の多さが、間期の核内におけるセントロメアの三次元ゲノム配置の解析を困難にし、その知見は乏しいままである。申請者らは、ニワトリDT40細胞を用いて、反復配列のないセントロメアを利用し、間期核のセントロメアに特異的に相互作用するゲノム領域を検出することに成功した (Nishimura et al., J Cell Biol, 2018)。この成功が本研究課題の端緒となっている。本研究の目的は、脊椎動物の間期の核内におけるセントロメアに特異的な三次元ゲノム配置の分子基盤とその役割の解明である。手法としては、上記の成果をベースとして、申請者らが以前独自に開発したタンパク質除去技術オーキシンデグロン法(AID法)に高精度ゲノム三次元構造解析手法(4C法とHi-C法)を組み合わせることにより、間期核のセントロメア三次元ゲノム配置形成に関する因子群を同定する。次いで、間期のセントロメア特異的ゲノム配置が、細胞分裂期のセントロメアの機能とどのように関わるかという点を明らかにする。当該年度にはネオセントロメアを保持したDT40細胞を用いてHi-C解析により、核内の構造解析を行った。その結果、間期の核内においてセントロメア(もしくはネオセントロメア)領域を境界とする染色体構造が構築されていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Hi-C解析によって、ニワトリDT40細胞核内の構造、特にセントロメアの構造の特徴を検出することに成功した。その結果、間期の核内においてセントロメア(もしくはネオセントロメア)領域を境界とする染色体構造が構築されていることが明らかとなった。セントロメアを構成する因子や核内構造の関連因子をAID法によりノックダウンして、この構造にどのような変化が現れるかを検証した。しかしながら,セントロメア構成因子のうちCENP-A,-C, -H, -Tを分解によりノックダウンしたが、セントロメア因子破壊株においてセントロメア及びその周辺の環境の変化は見られなかった。この結果から現時点でのAID法におけるタンパク質の除去効率が不完全であることが考えられた。そのため、より効率的にタンパク質分解除去を行うことのできる新たな系の構築を試みた。植物ホルモンオーキシンを用いたタンパク質分解除去法AID法においてはTIR1と呼ばれるオーキシン受容体を用いたオーキシン依存的なタンパク質分解を利用している。昨年、名古屋大学 ITbM研究所においてオーキシンの類縁体とTIR1の変異体を用いることでオーキシンの受容体への結合能を大幅に向上させることができることが示された。そのため、このオーキシンの類縁体5-Ad-IAAとイネのTIR1の変異体OsTIR1F74Aを用いて超高感度オーキシンデグロン系を構築した。新しいAID法ではナノモルオーダーの5-Ad-IAAを用いることで、高効率なタンパク質分解除去を可能となる。今後は新しく作成した超高感度AID法を使用したタンパク質除去を用いてセントロメア因子の除去を用いてHi_Cによる核内構造解析を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究においてニワトリ細胞を用いた核内セントロメア高次構造の解析の結果、セントロメアが核内の構造内においてもせ昨年度の研究においてニワトリ細胞を用いた核内セントロメア高次構造の解析の結果、セントロメアが核内の構造内においても染色体上の境界として働いていることが示唆された。そのため、タンパク質分解除去法であるAID報を用いてセントロメア因子の分解除去をおこない、その結果、セントロメアのもつ境界を形成する機能がどのように変化するかを解析した。しかしながら、セントロメア因子の分解にもかかわらず、セントロメアを境界とする構造配置は依然として形成されたままであった。この結果から、次の3つの仮説が考えられた。①そもそもタンパク異質の分解除去効率が悪いため、表現型がうまく見えていない。②セントロメアを構成する因子のうち2つがリダンダントに働いているため、単独の欠損では変化が見えない。③セントロメアを境界とする構造はすでに形成されてしまっており、セントロメア因子の欠損では効果が出ない。 上記の3つの仮説を検証するため以下の実験を計画している。①超高感度AID法を作成し、これを各種セントロメア因子に適用することでセントロメア因子の除去効率を高める。②各種セントロメア因子に関して二重変異体もしくは三重変異体を構築し、いくつかのセントロメア因子を同時に破壊した際にどのような影響が出るかを調べる。③セントロメア因子以外にもセントロメア近傍の構造に影響を与える可能性のあるコヒーシンやコンデンシンもしくはその他DNA複製因子などについてもAID法によるノックダウン細胞を作成し、これら因子をノックダウンした際のHi-Cプロファイルについて解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究室の移動そしてコロナウィルスによる実験の中断などに伴い計画していたHi-C解析を計画通りに実施することができなかった。Hi-C解析については共同研究ベースで行っているため、出張の規制や学会参加の規制がある状況下においては、実施が困難である。現在はコロナウィルスによる規制も緩和されているため、緩和されているうちに実験をすすめ、Hi-Cの解析に持っていけるようにする。またコロナウィルスが再燃し、他地域への移動が禁止された時を想定して、共同研究が支障なく進められるよう対策を行う。
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Research Products
(2 results)