2020 Fiscal Year Research-status Report
3D structural analysis of centromere in vertebrate cells
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19K06611
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西村 浩平 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (80582709)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | セントロメア / ニワトリDT40 / Hi-C / AID法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、間期の核内におけるセントロメアに特有な三次元ゲノム配置の分子基盤とその役割の解明である。間期核セントロメアの知見を乏しくしているもう一つの要因が、研究手法にある。本研究目的の達成のためには、セントロメアを構成する個々のタンパク質のノックアウト細胞の樹立が有効であるが、これらのタンパク質の多くは必須因子であるため、単純なノックアウト細胞の樹立は期待できない。申請者は、以前、タンパク質を速やかにかつ条件的に分解する技術(AID法と命名)を開発した(Nishimura et al., Nature Methods, 2009)。AID法は、標的タンパク質の短時間での分解・除去が可能であることから、セントロメアタンパク質の条件的ノックダウンには最適な系である。申請者は、ニワトリDT40細胞のAIDノックダウン株を、CRISPR/Cas9法を応用して簡便に作製する方法を既に構築し、また、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所で開発された合成オーキシンと変異型TIR1の高感度ペアを利用することで高感度AID法を構築した。イネの変異型TIR1であるOsTIR1F74Aと合成オーキシンの一つである5-Ad-IAAを組み合わせ、AID法を作成したところ、様々な動物の培養細胞において従来のAID法よりも1000倍もの効率で分解誘導が可能であることがわかった。以上の結果は今回作成された高感度AID法では従来のAID法と比較して1/1000の濃度で分解誘導が可能となり、動物細胞に対する化合物毒性を著しく減少させることが可能となった。本研究成果は、2020年9月17日付(英国時間)英国科学雑誌「Nucleic Acids Research」のオンライン版に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネオセントロメアを保有するニワトリのDT40細胞核を対象とするHi-C解析を行った結果、間期の核内においてセントロメア(もしくはネオセントロメア)を境界とする染色体構造が観察された。次にセントロメアを構成する因子や核内構造の関連因子をAID法によりノックダウンして、この境界構造にどのような変化が現れるかを検証した。しかしながら、セントロメア因子の破壊株においてセントロメアおよびその周辺の環境に変化は見られなかった。この結果からAID法におけるタンパク質の除去効率が不完全であることが考えられた。そのため、下記の2点を行った。①より高効率に分解を誘導できるAID法の開発、②既存のAID法によるタンパク質分解を他の因子の分解を用いて検証。①では名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所で開発された合成オーキシンと変異型TIR1の高感度ペアを利用し、様々な動物の培養細胞で働くSuper-sensitive AID (ssAID) 法を確立し、論文として発表を行った。②では染色体の構造に重要な働きを持つコヒーシンサブユニットの1つであるRad21に注目し、AID株を作成し、タンパク質の分解誘導を行ったのち、Hi-Cによる解析を行った。Hi-Cによる解析結果ではコヒーシンを除去した際の表現系として、ゲノム上の近位の相互作用が失われるという変化は観察できた。しかしながら、コヒーシンを除去した細胞においてもセントロメアを境界とする染色体構造は依然として観測されていた。以上の結果から少なくともコヒーシンのAID株においてはAID法によるタンパク質分解が表現型を誘導できるほどの効率を持っている。また、核内構造に関して重要な役割を持つコヒーシンだがセントロメアの境界構造に関しては関与していないという可能性が浮上した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は、ニワトリDT40細胞の複数のネオセントロメア形成株を用いてHi-C解析を行った結果、間期核内においてセントロメアが作り出す境界構造が、セントロメアの構成因子に依存するのではないかと考えた。そのため、新たに開発した高感度タンパク質分解除去法であるssAID法を用いて、セントロメアの各因子を標的としたAID細胞株を樹立し、これらのセントロメア因子を分解・除去することによって、セントロメアの境界構造がどのように変化するかを解析する。また、セントロメア構成因子以外のタンパク質についても視点を広げて解析することで、核内ゲノム高次構造に関連する因子の同定を行う。例えば、コンデンシンやCTCFなどの因子も細胞のゲノム上の境界構造を形成するのに必要なタンパク質であることが知られている。また、セントロメアと相互作用するヘテロクロマチン側因子としても、HP1タンパク質やヒストンH3のメチル化酵素(Suv39H1,2など)の破壊株を作製し、ゲノムワイド解析によってセントロメアとの相互作用に関わる因子の同定を行う。 Hi-Cデータはそれ自体がゲノム間相互作用の情報を含んでいる。従って、これらの相互作用情報から、染色体の構造自体もモデリングも可能である。PHi-Cなどのように、Hi-Cのデータを元に染色体の構造を可視化しようという動きも強まっている。ニワトリDT40細胞のZ染色体のHi-Cパターンに対してこれらのモデリング手法を適用することにより、染色体の構造を可視化する。様々な因子のノックアウトやノックダウンによって、核内のクロマチン状態がどのように変化したかを可視化することができれば、因子の機能阻害により、間期の染色体構造にどのような影響が現れるかを視覚的な理解が可能になると考えている。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの蔓延により、研究者、学生、そして、業者関係者まで大学構内への立ち入りが制限されたため、研究費の使用および、研究遂行に支障をきたした。また、海外への渡航や県をまたいだ移動なども制限され、共同研究の打ち合わせや学会等についてもそのほとんどがオンラインによる開催となってしまったため、使用額に大きな狂いが生じた。 本年度も昨年度と同様にコロナウィルスによる影響が予想されるため、研究費の仕様と遂行にどのような影響が出るか依然として不明瞭ではある。しかしながら、昨年度とは異なり、徐々に良くなってくると考えられるため、研究遂行に支障が出ないよう、研究を遂行したい。
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Research Products
(6 results)