2021 Fiscal Year Research-status Report
複製新生鎖へのクロマチン形成機構の探索:AFMによる新生鎖クロマチンの可視化解析
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19K06614
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
日詰 光治 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (10378846)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 複製 / ヌクレオソーム / クロマチン / ヒストン |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度(2020年度)までの研究において、出芽酵母のMcm2のアミノ末端領域(Mcm2N)のGST融合タンパク質の精製を行った。これを用いたプルダウンアッセイにより、Mcm2Nは、コアヒストンとは結合するが、ヌクレオソームへの結合は弱いこと、また、ヒストンH2A-H2Bサブユニットとの結合は弱く、ヒストンH3-H4サブユニットとの結合は強いことを見出した。 本年は、まず、結合実験時の塩濃度を操作するなどして、この結合力の相違を再度確認した。ヒストンH3-H4との結合はNaCl濃度 300 mM 条件下で検出可能である一方で、ヒストンH2A-H2Bとの結合は、150 mM 条件下では検出できたが、300 mM 条件下では検出できなかった。また、ヌクレオソームとの結合は、NaCl濃度150 mM 条件下でも検出できなかった。 また、前年度までに精製を行っていた二つの変異タンパク質(Mcm2の90番目のチロシンをアラニンに置換したY90A変異体、および、80番目のアスパラギン酸と81番目のチロシンをそれぞれアラニンに置換したD80AY81A変異体)を用いて実験したところ、それぞれ、ヒストンへの結合がわずかに減弱することを見出した。更に、80,81,90番目のアミノ酸すべてをアラニン置換した3xA変異体のMcm2Nを精製したところ、ヒストンへの結合が顕著に低下することを見出した。 以上の結果は、ヒトのMcm2を用いて行われた研究(Huang et al. 2015)の結晶解析とよく一致する。この構造解析においては、Y81やY90はそれぞれヒストンH4とH3と相互作用し、かつ、その部位はヌクレオソームを形成した場合にDNAとヒストンが結合すべき部位である。Mcm2Nは、DNAから解離したヒストンH3-H4とのみ結合しうることを、本研究において生化学的に示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初予定していたAFM観察のための出張実験は行わなかった。昨年度に引き続き、AFMによる構造解析に代えて、生化学的な解析に重点を置いて実験を進めた。研究の進捗に大きな障害はないものの、見出されたMcm2Nとコアヒストンとの相互作用について、生理的機能との整合性を検討するため、結合・解離の動的性質を窺うような定量的な解析が必要であると考えるが、未だ実施できていない。これは、AFM観察から生化学解析に重点を置くように当初の予定を“方針転換”した影響もあり、また、感染症対策を講じての教育業務などのため研究活動に従事する時間が制限されたためであると考える。以上の状況から、進捗状態はやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
Mcm2Nとヒストンとの“結合”の強さに関しては、塩濃度を振った溶液条件下で測定するなどして、十分な検討をこれまでに行った。 細胞内でMcm2Nは、ヒストンを鋳型鎖から受け取り、その後に新生鎖に受け渡すという機能が期待されている。このことを踏まえて、Mcm2Nとヒストンとの相互作用の“解離”の速度についても定量的に測定することを目指していたが、当初の研究計画の3年間が終了する2021年度中に実施することができなかった。本研究課題の期間を延長し2022年度までとすることで、Mcm2Nとヒストンとの結合が、解離へと向かう経時変化の測定を実施することとする。また、Mcm2NとヒストンH3-H4との解離について、DNAやH2A-H2Bの影響を調査することで、ヒストンH3-H4がMcm2Nから新生鎖DNAへと受け渡されるプロセスを考察する。
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Causes of Carryover |
執行率96.7%と、ほぼ予定通りに予算を執行した。16,786円の次年度使用額が生じたが、これは、2021年度中に完了しなかった生化学実験を、研究期間延長した2022年度に実施する際に使用する。
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