2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K06616
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山中 総一郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80711845)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 生殖細胞 / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、マウス雄性胎児期の生殖細胞(ゴノサイト)で起きるクロマチン変化を明らかにすることを目的としている。これまでに我々は、ゴノサイトでは染色体が大規模な再構築を受けていることを示してきた。しかし、その生物学的意義やその分子メカニズムに関しては不明な点が多い。そこで、ゴノサイトにおける染色体再構築の原理に迫るために、ゴノサイトを用いてscRNA-seqやクロマチンプロテオームを行うことでその責任因子候補の絞り込みを行ってきた。その結果、昨年度までにBrdtタンパク質がその候補として有力であることを見出している。 本年度では、BrdtのKOマウスの作製を行った。今回、BrdtのKOマウスを新規に作製したためにそのアリルの確認や、これまでに報告されているような雄性不稔の表現型の検証を行った。これまでに、Brdt KOマウスが不稔の表現型を引き起こすことが確認できたため、次に精巣から生殖細胞のみを単離できるようなTGマウスとの掛け合わせを行ってきた。その結果、最終年度に向けて特定の遺伝型を持った個体数が順調に増えてきている。 本年度では上記と並行して、ゴノサイトの核の状態をプロファイルするため核ラミナと相互作用するゲノム領域(LAD)のプロファイリングを目指した。通常、LADのプロファイリングに必要な細胞数は5x10^6細胞と非常に多いが、今回CUT&TAG法を用いることでLADのプロファイリングを少数細胞から行うことに成功した。今後、KOマウスの解析と並行して、ゴノサイトの核の状態を核ラミナという観点からも明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的に沿うかたちで、ゴノサイトクロマチンの形成に関与が疑われる因子の絞り込みが済み、そのKOマウス個体の作製まで完了している。さらに、ゴノサイトクロマチンの細胞生物学的な検証の前段階として、そのLADの解析手法を確立した。これらを鑑み、全体として研究が順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では以下の二つの実験を推進する。(1)Brdt KOマウスの解析。Brdt KOマウスの雄の胎仔から生殖細胞を単離して、そのクロマチン状態を検証する。その検証方法としてATAC-seq, Hi-C, ChIP-seqを検討している。これらの手法を用いて多角的にBrdt KOマウスにおけるクロマチン異常の有無を検証する。(2)ゴノサイトを用いた細胞生物学的解析。ゴノサイト核を細胞生物学的に検証するために、組織染色を行う。各種のヒストン修飾抗体を用いた染色だけでなく、核ラミナに対する抗体を用いてその性状を明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により一部の受託解析(次世代シーケンス解析)が次年度持ち越しとなったため。
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