2020 Fiscal Year Research-status Report
複雑な形質の遺伝的背景の解明に向けた多因子的なゲノム情報処理技術の開発
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19K06629
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中谷 明弘 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任教授 (60301149)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲノム情報 / 連鎖不平衡 / ミトコンドリア / 画像処理 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
電子顕微鏡画像からミトコンドリアの空間的な形状と分布を数値的な特徴量として抽出するソフトウェアの開発を進めた。典型的な画像内では複数のミトコンドリアの断面が筋原繊維をはじめとする周辺組織と共に分布している。個々のミトコンドリアの膜(内膜と外膜)やクリステといった内部構造も観測される。電子顕微鏡画像は白から黒までの階調データ(グレースケール)であるが、一定の相関はあるものの階調の範囲の指定のみによって特定の組織や部位の正確な抽出は難しい。そこで、画像中の標的特性の領域(例えばミトコンドリア)からサンプリングした多数の部分領域(パッチ)を学習データとして判定モデルを作成し、作成した判別モデルを画像全体に適用して標的特性の探索を行う手法の開発を進めている。誤判定となった領域からの学習データの再サンプリングと判定モデルの更新を繰り返すことによって画像全体の判定の精度を向上させる手法の開発を進めている。疾患との関連を扱うためには疾患検体に見い出される異形化しているミトコンドリアを対象とする必要がある。標準的なミトコンドリアを抽出する判定モデルの合致度の低さ(不合致度)によって形態的な変異の評価を行うこともできるが、疾患ごとの判定モデルを作成することによってより直接的な評価を行う手法の開発を進めている。また、判定モデルを作成する際にサンプリングする学習データを付随する情報と共に蓄積してデータベース化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリアの特徴量の抽出に関しては、HTML形式やPDF形式による文献の図として電子的に公開されている電子顕微鏡画像に加えて共同研究者による非公開データを用いて手法の開発と検証を進めている。画像処理用のソフトウェアは、GUI操作によって学習データのサンプリングと判別モデルの更新を直観的に行える構成になっている。GUIのツールキットとしてQtライブラリを用いたC++言語での実装を進めている。判別モデルは作成した環境から独立して他の画像データにも適用できるような形式で保存する。前年度から継続して実施している疾患の有無や疾患に関連した形質のモデル化に関しては、疾患検体群や健常検体群の数値的なサブタイピング(より詳細な分類)に加えて中間検体群や未確定検体群の多因子的な数理モデルによるスコアを用いた特徴づけや分類を行う仕組みを整備した。また、疾患に関連する遺伝子間の関係ネットワークを描画するツールの開発を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリアの電子顕微鏡画像の解析に向けて、数値的なアルゴリズムによる自動処理と対話的な半自動マニュアル処理とを組み合わせた手法の開発を進める。対象データに関する知見をもったユーザによる判定結果の改善処理の過程(学習データのサンプリングと判別モデルの更新)を蓄積する仕組みを構築する。蓄積されている判別モデルを新規の画像データに適用して得られる結果から改善処理を開始できるようにする。画像内の特定の領域の中の特徴をパラメータ化して比較できるような手法の開発を行う。
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Causes of Carryover |
社会情勢による制約のために予定していた旅費等に次年度使用額が生じた。計算機資源等に振り替えてより大規模なデータ処理を可能とする環境の整備に用いる。
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Research Products
(3 results)