2020 Fiscal Year Research-status Report
出芽酵母小胞体ストレス応答を制御するキナーゼ・ホスファターゼの網羅的解析
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19K06632
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水野 智亮 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80529032)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / オートファジー / キナーゼ / 転写因子 / 遺伝子発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜・分泌タンパク質の品質は、小胞体で管理されており、正常タンパク質は他の細胞小器官に運ばれるのに対して、不良タンパク質は小胞体に留まる。小胞体に不良タンパク質が蓄積した状態を小胞体ストレスと呼ぶ。細胞が小胞体ストレスを感知すると、小胞体ストレス応答経路が活性化し、遺伝子発現を介した不良タンパク質の除去、およびグローバルな翻訳抑制を介した小胞体への負荷軽減が誘導される。また、小胞体ストレスは細胞内内容物の分解とリサイクルをおこなうオートファジーも誘導する。オートファジーは非選択的オートファジーと選択的オートファジーに分けられ、出芽酵母では小胞体ストレスによって非選択的オートファジーが誘導されることが知られていたが、小胞体選択的オートファジーが誘導されるか不明であった。我々は、小胞体ストレスによって小胞体選択的オートファジーが誘導されること、小胞体選択的オートファジーで特異的に機能する因子Atg39の発現レベルが小胞体ストレスによって上昇すること、この上昇はATG39プロモーターの活性化を介していることを独自に見出した。次に、我々が小胞体ストレス応答に機能することを独自に見出したキナーゼ・ホスファターゼを含む既知の小胞体ストレス応答関連因子が、小胞体ストレスによるATG39プロモーターの活性化に関与しているか検討した。その結果、ATG39プロモーターは、Snf1 AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)によって正に制御されていることを明らかにした。また、Mig1およびMig2がATG39のリプレッサーとして機能していることを明らかにした。小胞体ストレスによって活性化したSnf1はMig1/2の核外輸送を促進したことから、小胞体ストレス応答においてSnf1はMig1/2を負に制御することによって、ATG39プロモーターと小胞体選択的オートファジーを活性化すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出芽酵母小胞体選択的オートファジー受容体Atg39の発現が、Snf1 AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)によって正に、Mig1/2転写リプレッサーによって負に制御されていることを見出し、選択的オートファジー受容体の転写制御が選択的オートファジーの活性調節に重要であることを示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
小胞体ストレスによるATG39プロモーターの活性化は、Snf1 AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の欠失によって減少したが残存していた。このことから、Snf1の他にも小胞体ストレスによるATG39プロモーターの活性化に関与する因子が存在すると考えられる。そこで、出芽酵母キナーゼ・ホスファターゼを詳細かつ網羅的に解析するとともに、ATG39プロモーター活性を簡便に測定する系を確立し、小胞体ストレス応答においてATG39プロモーター活性を制御する因子をさらに明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
(理由)解析が順調に進行したこと、および論文執筆に時間を割いたことから、プラスチック器具類・培地類・試薬類・酵素類を含む消耗品の消費が少なかったため。 (使用計画)遺伝子発現解析の正確性向上を目指し、real time PCRの試行回数と精度を上げるべく、使用するキット類・酵素類の購入に充てる。
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