2019 Fiscal Year Research-status Report
アクチンアセンブリー動態の細胞間不均一性からせまる遊走モードの多様性と制御原理
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19K06633
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 昭彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (90612119)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞運動 / 細胞極性 / 走化性 / マイクロ流路 / 細胞骨格 / アクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、細胞外の走化性誘引物質濃度の時間変化に対する細胞の誘導動態変化に注目して実験を進めた。まず、細胞性粘菌の野生株として知られるNC4株を用い、葉酸濃度のステップ状変化に対しての栄養成長期の細胞の遊走動態について、共焦点顕微鏡下で1細胞生細胞観察を行った。生細胞観察には、形質転換によって作出した、GFPを結合したLifeactを発現したNC4株を使用した。他の細胞種を用いた先行研究と同様に、濃度上昇に対して、細胞は濃度変化前の極性を維持しながら運動を持続した。一方、濃度減少に対しては、細胞極性が濃度変化前の方向から速やかに反転、ないし転回する挙動を示し、結果として細胞は刺激変化前後で、大きな方向転換を示した。運動方向の変化は濃度減少直後から30秒後まで一過的に大きくなり、その後4分後には濃度減少前と同程度の方向転換頻度に戻るという適応的な振る舞いを示した。次に、発生ステージと誘引刺激応答の関係を探るために、集合期のNC4株に対して誘引物質cAMPを用いて同様の解析を行った。濃度増加に対しては、栄養成長期と同様に極性を持続させるように直進を続けた。濃度減少刺激に対しては、栄養成長期とは異なり、濃度が減少しても細胞極性の方向転換は観察されなかった。細胞極性は、濃度変化前後で同じ方向が維持されつつ、数分かけて細胞極性が弱まっていき、運動速度が低下するという挙動が観察された。Lifeactの細胞膜付近の局在動態解析からは、栄養成長期と集合期の細胞では、アクチンバンドルの集積の仕方や推進力の起源が異なっていることが示唆された。そこで、一連のアクチン重合関連因子と蛍光タンパクとの融合タンパクの形質転換体の作出を進め、今年度中におおよそ主要な形質転換体の作出が完了した。来年度は、これらを用いて、各種アクチン重合関連因子の局在動態を解析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複数の細胞種や実験系についての条件検討に時間が取られたため、当初の予定と比較してデータの蓄積に遅れが出ているため。
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Strategy for Future Research Activity |
実験系に関する条件出しは進んできているため、今年度はデータの取得に注力する。特に、アクチンフィラメントの多様性が極性の生成・消失、方向転換といった細胞運動動態と強く関連していると示唆されているので、アクチン核形成関連のライブイメージングと、薬剤処理による機能阻害による解析を中心に進める。
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Causes of Carryover |
実験条件検討に予定よりも時間を要したため、計測に関わる機器等の物品の購入を次年度に回すことにしたため。
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