2019 Fiscal Year Research-status Report
酵母液胞におけるオートファジーによるタンパク質分解の全貌を解明するための研究
Project/Area Number |
19K06634
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
及川 優 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (30569215)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オートファジー / 出芽酵母 / タンパク質分解 / 質量分析 / ペプチドーム |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジー駆動の分子機構の理解は進む一方で、オートファジーが誘導されると「どのタンパク質が」「どの様な条件で」「どの程度」液胞において分解を受けているのかという最も基本的な情報に関しては驚くほど理解が進んでいない。本研究では、オートファジーによって液胞内で展開されているタンパク質分解の全貌を網羅的に捉えることを目的としている。我々が独自開発した手法を用いることで、タンパク質が分解された結果として生じたペプチドを酵母細胞から回収し、その際どんなタンパク質由来のペプチドが生成されていたのかを質量分析を用いた解析で同定することが可能となった。以下、2019年度に得られた成果を列挙する。 (1) ペプチドーム解析手法の確立:酵母細胞内でタンパク質が分解された結果生じるペプチド断片を回収し、質量分析で解析する実験系を確立した。これにより、細胞を回収した時点に分解されていたタンパク質が何であったかを示すデータをダイレクトに得ることが可能となった。 (2) オートファジー初期におけるタンパク質分解動態の解明:窒素源飢餓初期に分解されるタンパク質を解析したところ、解糖系の酵素など細胞内の存在量が多いタンパク質が比較的速やかに分解されていることがわかった。また、同じ解糖系酵素であっても分解されるタイミングが異なっていることも明らかとなった。 (3) オートファジーによる分解を受ける因子の新規同定:液胞内にあるタンパク質分解酵素のうちのいくつかを欠損させた株は分解速度が低下すると考えられる。実際にこれらの株でペプチドーム解析を実施したところ、野生型では捉えることができなかったオートファジーの基質を複数同定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、申請時に計画した項目について一定の進展がみられていることに加え、これまでに明らかとなっていないオートファジーの基質を新規に同定するなど新たな展開が期待される成果も得られているため、本研究課題は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 時間軸に沿った分解動態の解明:オートファジー誘導後のタンパク質分解動態を精査する。 (2) 異なるオートファジー誘導条件の比較:ラパマイシン処理など、窒素源飢餓以外の方法で誘導されるオートファジーで分解されるタンパク質に違いがあるのかを検討する。 (3) オートファジーの基質の精査:今回新たに同定されたオートファジーの基質について、分解される意義やメカニズムを解析する。 (4) 分解されるタンパク質の定量解析:オートファジーによって分解されるタンパク質の量を議論するため、質量分析による定量解析を実施する。
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Causes of Carryover |
2019年度に新規導入された質量分析装置について、当初の予定では設置直後から定量解析のための使用を計画していたが、装置側の問題が多数発生した影響で満足な測定を実施することができなかった。そのため定量解析で計画していた経費分の実験を実施することができなかった。現在は装置も順調に稼働しているため、遅れた解析分を2020年度に挽回する計画としている。 使用計画:来年度実施する質量分析を用いた定量解析のために必要な試薬を購入する。
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Research Products
(1 results)