2022 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜湾曲作用をもつ分子FCHO2によるエンドサイトーシスの制御機構
Project/Area Number |
19K06643
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
中西 宏之 甲南女子大学, 医療栄養学部, 教授 (80314318)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | FCHO2 / BARドメイン / Nedd4ファミリー / 細胞膜湾曲 / クラスリン / エンドサイトーシス / ユビキチン |
Outline of Annual Research Achievements |
BARドメインはバナナのような立体構造をもつ細胞膜結合ドメインであり、その分子に固有の曲率で細胞膜を湾曲させる。FCHO2はBARドメインをもつタンパク質であり、クラスリン被覆ピットの形成に重要な役割を担っている。本研究では、BARドメインをもつタンパク質FCHO2に焦点を絞り、そのBARドメインが形成する固有の曲率の役割を明らかにすることを目的としている。本研究ではFHO2の細胞膜の曲率を認識する分子が存在すると推測し、その分子候補としてのユビキチン化酵素Nedd4Lを解析とした。Nedd4Lは上皮性ナトリウムチャンネル(ENaC)などの膜タンパク質をユビキチン化して、クラスリン依存性エンドサイトーシスを制御している。 その結果、Nedd4Lの自己ユビキチン化を指標としてインビトロで酵素活性を測定すると、Nedd4Lは直径50nmのリポソーム(FCHO2が形成する曲率と同じ)と選択的に結合して活性化された。ENaCのペプチドを基質として酵素活性を測定すると、Neddd4Lが基質と結合すること、基質は細胞膜と結合していることがNeddd4Lの活性化に必要であった。また、細胞レベルでFCHO2のBARドメインが形成する膜湾曲にNedd4LがC2ドメインを介して特異的にリクルートされ、活性化されることを明らかにした。他のBAR タンパク質のFBP17やamphiphysinの膜湾曲入にはリクルートもされず、活性化もされなかった。加えて、培養上皮細胞内にFCHO2、Nedd4L、クラスリンの蛍光タンパク質を共発現させると、3者は共局在することを見出した。 以上のことから、クラスリン被覆ピットにおいてNedd4LはC2ドメインを介してFCHO2 BARドメインが形成する膜湾曲に結合して活性化される。さらに、ENaCのような細胞膜上の膜タンパク質と結合することがNedd4Lの活性化に必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試験管内でNedd4Lが直径50 nmのリポソーム(FCHO2が形成する細胞膜曲率と同じ)に特異的に結合して活性化されるデータを得ることができた。一方、FCHO2が 形成する屈曲した細胞膜にNedd4Lが結合して活性化されるか(自己ユビキチン化で測定)を検証した結果、FCHO2とNedd4Lによる細胞膜への結合が競合的であり、FCHO2によるNedd4Lの活性化のデータは得られなかった。 しかしながら、Nedd4Lと結合できる基質ENaCペプチドをリポソームと結合させると、FCHO2が形成する細胞膜曲率にNedd4Lがリクルートされ、活性化されることを見出した。ENaCペプチドをリポソームから遊離させると、FCHO2によるNedd4Lの活性化は見られなかった。 ENaCはNedd4Lによるユビキチン化によってクラスリン依存性にエンドサイトーシスされることが知られている。細胞レベルでこのエンドサイトーシスを解析するために、上皮性ナトリウムチャンネル(ENaC)のα、β、γの3つのサブユニットを発現させた培養細胞の細胞株を作製している。この細胞株においてNedd4LをノックダウンするとENaCのユビキチン化が阻害され、エンドサイトーシスが抑制された。同様に、FCHO2のノックダウンによってENaCのユビキチン化が阻害され、エンドサイトーシスが抑制された。したがって、FCHO2がNedd4LによるENaCのユビキチン化を制御し、そのクラスリンエンドサイトーシスをコントロールしていることが明らかになった。 FCHO2とタンパク質―タンパク質相互作用する新しい分子を検索するために、プルダウン法に用 いるFCHO2の様々なコンストラクトを作製し、さらに免疫沈降法に用いるFCHO2の抗体も作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)FCHO2によるNedd4Lの活性化は細胞膜湾曲を介したものであり、蛋白―蛋白相互作用によるものでないことを明らかにする。具体的には、免疫沈降法やプルダウン法を用いて、蛋白―蛋白相互作用を調べる。また、FCHO2 BARドメインはPSと同様にホスファチジルイノシトール(4,5)二リン酸(PIP2)にも結合するが、Nedd4L C2ドメインはPSに結合するが、PIP2には結合しない。この性質を利用して、PIP2のリポソーム存在下でFCHO2がNedd4Lを活性化するかを解析する。さらに、50nmリポソームによる膜湾曲による活性化されたNedd4LがFCHO2によってさらに活性が増強されるかを調べる。 2)Nedd4Lの活性化メカニズムを解析する。Nedd4LのC2ドメインはHECTドメインと結合して、活性を自己阻害している。C2ドメインが細胞膜と結合すると自己阻害が解除され活性化されると推測される。Nedd4LのC2ドメインとsynaptotagminやプロテインキナーゼCなどのC2ドメインと比較し、保存されているアミノ酸残基に変異を入れ、細胞膜湾曲の認識する活性やHECTドメインとの結合活性を調べる。細胞膜湾曲を認識する活性を消失した変異株はHECTとの結合も消失すると考えられ、自己阻害が解除されて活性化されることが予想される。 3)FCHO2と蛋白―蛋白相互作用する分子をyeast two hybrid法、プルダウン法、免疫沈降法を駆使して検索する。FCHO2と膜曲率を介して結合する分 子候補を検索するために、直径400nm、200nm、100nm、50nm、25nmのリポソームとラット脳可溶画分とインキュベーションする。Nedd4ファミリー以外の分子を同定し、分子レベル、細胞レベルで解析する。
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Causes of Carryover |
実験の進歩状況自体は2022年3月までで概ね順調に進歩し、十分な研究結果を得られていた。しかし、2022年4月からの新しい研究室の立ち上げの影響で、論文の投稿が遅れた。次年度に論文の投稿費用と追加実験のための物品購入に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)