2019 Fiscal Year Research-status Report
AID法を用いた有糸分裂におけるコヒーシン非依存的な染色体間結合の検討
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19K06648
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
白土 玄 国立遺伝学研究所, 遺伝メカニズム研究系, 特任研究員 (80625533)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 染色体 / 紡錘体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「AID法を用いた有糸分裂におけるコヒーシン非依存的な染色体間結合の検討」の主な目的は、対象のタンパク質を生体内で高速で分解可能なAID(Auxin-Inducible Degron)法を用いてDNA鎖間の絡まりを解消する酵素Topoisomerase II(TOP2)の分裂期での機能を詳細に解析し、分裂中期/後期における染色体間のDNA鎖結合の実態を解明するとともに、DNA損傷・細胞周期進行との関連性を追求することである。 本課題は研究計画調書に記した通り以下の3つのパートで進める方針である。(1)分裂中期/後期での染色体間のDNA鎖結合へのTOP2の関与の解明 (2)DNA鎖間結合とUFB/Chromatin bridge形成との関連性の追求 (3)染色体間DNA鎖結合による細胞周期異常・DNA損傷・癌化・老化への影響の評価である。現在までに免疫染色法及びライブイメージング法を用いて分裂期中期/後期特異的なTOP2の分解による紡錘体形成・染色体分離への影響を解析中であり、(1)に関連して分裂中期/後期のTOP2の活性が染色分体間の結合に重要であること、そしてその結合が紡錘体微小管の形成に対し力学的な影響を与えていることを示唆する結果を得ている。紡錘体の形状変化に伴って細胞周期制御に関連した複数の制御因子の局在も大きな影響を受けることも明らかになってきており、並行して(3)に関連したDNA損傷と細胞周期への影響を評価中である。この課題の進展は染色体・紡錘体の分野に留まらず、幅広い研究分野に新たな知見を与えるものと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度では前述のように免疫染色及びライブイメージング法を用いて分裂中期/後期特異的なTOP2の分解と紡錘体形成・染色体分離への影響を中心に解析しており、染色体凝集が完了した後の段階であってもTOP2による染色分体間のDNA結合制御が依然として重要であること、そして異常な染色分体間の結合が紡錘体微小管の形成と細胞周期制御に関連した複数のタンパク質の局在に大きな影響を与えることを示唆する結果を得ている。特にspindle midzone形成から分裂溝形成までの過程が大きな影響を受けており、現在この点に注目してAIDを用いたTOP2分解系と、ICRF-193に代表されるTOP2阻害剤による表現型を比較しながら、詳細な解析を行っているところである。 また、TOP2分解によって生じた紡錘体の形状変化に伴うDNA損傷の程度と力学的な負荷との相関関係も評価中であり、分裂後の細胞の生存性との関係も含めて、こちらに関しても定量化を進めている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、Expansion microscopy法や超解像顕微鏡法などを用いて、TOP2分解による染色分体間結合の変化による紡錘体微小管の形状変化と細胞周期制御に関わるタンパク質の局在をさらなる高解像度で可視化することに挑戦している。細胞周期制御に関わるタンパク質の局在異常が真に紡錘体形状変化によるものなのか、また、その紡錘体形状変化が染色分体結合に起因した力学的なものなのかを示すための実験系も検討中であり、微小管の形状変化のイメージングと合わせて、染色分体間の結合制御と紡錘体形成・細胞分裂との関連性の分子メカニズムにさらに迫ることができると期待している。 また、紡錘体の形状変化に伴って生じるDNA損傷の程度と力学的負荷との相関関係も評価中であり、(2)に関連したDNA鎖間結合とUFB/Chromatin bridge形成との関連性の追求も併せて行う予定である。これらの結果をまとめ、早期に論文を投稿・掲載を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
Live imagingプロトコルの改善により、試薬や観察用dishを節約しながら細かく実験条件の検討をすることが可能になったため、結果的に次年度使用額が生じることになった。これは2020年度の実験に必要な消耗品の購入にあてる予定である。
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