2020 Fiscal Year Research-status Report
オルガネラ量の恒常性を保つシステムの根底原理の解明
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19K06662
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柳谷 耕太 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70614775)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミトコンドリア量制御 / オルガネラ / 細胞周期 / 翻訳制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
前回、ミトコンドリアを人為的に減少させた際に引き起こされる細胞応答として、細胞の増殖が著しく遅れることを報告した。このミトコンドリア不足状態の細胞の増殖が遅れる原因を解析したところ、興味深いことに、この細胞増殖の停止は、培地へのウリジンの添加で一部解消された。ピリミジンの新規合成には、ミトコンドリア内膜に分布する酵素、DHODHが必要であること、ウリジンの培地への添加は、DHODHをバイパスして、ピリミジンの合成を可能にすることを考慮すると、細胞は、ミトコンドリア不足を、ピリミジン不足として感知して、細胞周期を停止させている可能性が示唆される。つまり、ミトコンドリア量の細胞周期チェックポイントが存在し、それが細胞内のピリミジン濃度で感知されているという仮説である。実際、ピリミジン合成を異なる方法で阻害した場合には、細胞増殖が停止するとともに、ミトコンドリアの増殖が起こることを見出しており、この仮説が真である可能性は十分にある。また、異なるアプローチで、ミトコンドリア不足細胞の解析を行った結果、ミトコンドリア不足状態で、翻訳の減弱が起こることも見出した。細胞内の翻訳は、サイトゾルとミトコンドリアマトリクスで起こるが、この翻訳抑制は、サイトゾルでのみ起こり、ミトコンドリア内では、起こらないことが明らかになった。このことから、ミトコンドリア不足で起こる翻訳制御は、核ゲノムとミトコンドリアゲノムの遺伝子発現のバランス制御に関わっていることが示唆された。こちらの経路については、責任遺伝子も同定しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オルガネラ量の減少によって引き起こされる細胞応答を新たに見出し、その細胞応答の責任遺伝子を絞りこむことが出来ているので、(2)のカテゴリーを選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリア量の細胞周期チェックポイントについては、その責任遺伝子の同定を行う。ピリミジン合成が重要な点であることを考慮すると、核ゲノムの合成遅延が何らかのシグナルになる可能性があると考え、p53の状態を調べたが、ミトコンドリア不足で特に変化は見出せなかった。つまり、何らかの異なる責任遺伝子が存在するはずである。ミトコンドリア不足細胞の遺伝子発現解析の結果、細胞周期をG1/S期で停止させるGADD45Aの転写誘導が起こっていたことから、この因子が責任分子である可能性が示唆される。そこで、この因子を欠失した細胞で、ミトコンドリア不足細胞の細胞増殖を検証する。また、GADD45Aに依存しない可能性も加味し、細胞周期進行のレポーターを作製し、ゲノムワイドに責任遺伝子の探索をする準備もしておく。 ミトコンドリア不足時に引き起こされる翻訳抑制反応については、その経路に関わる遺伝子を決定したのち、その因子を欠損させた細胞を作製し、この細胞応答がミトコンドリア量恒常性にどのように寄与するのかを検証する。
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