2019 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエ視細胞における極性輸送のライブイメージングによる観察
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19K06663
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐藤 明子 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 准教授 (30529037)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 輸送開始 / 同調的輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物の体を構成する細胞の多くは極性を持っている。このような細胞構造を作成し維持するためには膜タンパク質を選別して適切な細胞膜ドメイン(極)へと送る輸送(極性輸送)が必要だが、その分子機構はよく分かっていない。本研究は、ショウジョウバエ視細胞をモデルとして、光受容膜・ストーク膜・側底面膜の3つの異なる膜ドメインへの極性輸送の分子機構を明らかにすることを目的としている。申請者はこれまで変異モザイク網膜の固定サンプルの観察によりこの過程に関わる因子を同定してきたが、本研究では、①極性輸送の根幹となる積荷の選別とポストゴルジ小胞の形成過程をライブイメージングにより観察し、また、観察したタンパク質の局在する膜構造を特定化するために、②電子顕微鏡でのタンパク質局在解析を行う。さらに、③これまでに同定した極性輸送に関わる因子の欠損視細胞において、ライブイメージングと電子顕微鏡でのタンパク質局在解析を行うことで、これらの因子の機能の詳細を明らかにする。これらを総合し、極性輸送の分子機構の解明を目指している。本年度は、そのために、視細胞において光により輸送開始できるシステムLOVTRAP法の作成に取り組んだ。その結果、HeLa細胞においてLOVTRAP法を機能させることに成功した。さらにショウジョウバエ視細胞において、光受容膜・ストーク膜・側底面膜の3つの異なる膜ドメインへの輸送を開始させるため、様々なCargo を作成し暗所での輸送の阻害と、光による輸送の開始が起こるCargo とHook の組み合わせと光条件を検討している。現在まだ完全には成功していないが、どのような改変が必要かを理解しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、光により輸送を開始する新規輸送開始実験システム、LOVTRAP輸送開始システムを作成した。まず、HeLa細胞を用いて、様々なLOV2-Hook, Zdk1-Cargo を作成し、暗所ではZdk1-Cargoの輸送が起こらず,LOV2-Hookによりオルガネラに留められていること、光照射により輸送が開始することを確認できた。次に、様々なLOV2-Hook, Zdk1-Cargo を発現する形質転換バエを作成した。特に、光受容膜・ストーク膜・側底面膜に特異的に輸送されるCargoの作成に困難が生じた、光受容膜に関しては、GPIアンカーシグナルをGFPに付加するのみで機能したが、ストーク膜・側底面膜に特異的に輸送されるタンパク質の一部もしくはサブユニットの一部分を用いた場合、多くの場合は、各々のドメインだけでなく、他の部位にも誤った輸送が起こってしまった。そこで、巨大なたんぱく質ではあるが、全長を用いる、またはサブユニットを予め融合して用いた結果、特異性をもたせることに成功した。次に、LOV2-Hookにより輸送がオルガネラに留められるかを検討した結果、小さなタンパク質はほぼ100%オルガネラ内にCargoを留めることができたが、巨大なタンパク質の場合、漏れが生じることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、CargoのN末端にZdk1を一分子のみ付加している形で作成しているが、巨大分子の場合、Zdk1がN末端に一分子ではLOV2との結合が十分に起こらないことを意味している。従って、今後は、Zdk1 を複数、もしくは、位置を変えて付ける必要がある。また、現在、青色光による輸送開始には成功しておらず、光条件の検討も今後の課題である。
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Causes of Carryover |
実験は概ね順調に進んだが2月から3月に東京での顕微鏡観察を予定していたが、コロナのこともあり、実験することができなかったため、経費にあまりが生じた。本年度、コロナの状況が改善した後には、観察を行いに行く予定であり、旅費として使用する可能性が高い。
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