2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating the involvement of Microtubule-Wnt/PCP network in cartilage development
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19K06664
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
菊池 浩二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (70457290)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 微小管-Wnt/PCPネットワーク / Map7d1 / 骨格形成 / 細胞極性 / ゲノム編集 / GFPノックインマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
私共は培養細胞株・ショウジョウバエを用いた解析によって、細胞極性形成を制御する新たな分子メカニズム:微小管-Wnt/PCPネットワークを見出した(EMBO Rep., 2018.)。本研究では、その制御分子である微小管結合タンパク質:Map7、Map7D1に着目して、哺乳類動物の組織形成時における微小管-Wnt/PCPネットワークの機能を明らかにすべく、マウスを用いた解析を実施する。 これまでに実施した組織学的解析によって、Map7d1ノックアウト(KO)胎仔では脛骨・硬骨組織の長さが短くなり、その原因が軟骨組織におけるカラム形成の異常(軟骨細胞の配列の乱れ)による可能性を見出した。本年度はmicro-CTによって非破壊的に全身骨格を撮影し、骨格形成への影響を解析した。micro-CTによる解析においても、Map7d1 KO胎仔では脛骨・硬骨組織の長さが短くなる事が確認でき、さらに、脊椎後弯を呈する事を見出した。また、上記の表現型に性差は認められなかった。 硬骨組織を生み出す軟骨組織のカラム形成には、軟骨細胞の細胞極性:紡錘体軸・細胞挿入・繊毛形成・配列保持が必須である。細胞分裂とカップルした紡錘体軸の制御は増殖軟骨細胞層で行われ、細胞挿入・繊毛形成・配列保持の制御は細胞分裂が終了した以降に行われると考えられている。組織切片を用いた免疫染色により、Map7D1の発現が増殖軟骨細胞層以降の前肥大軟骨細胞層で上昇する事を見出した。上記の表現型と合わせて、Map7D1の発現パターン・細胞内ダイナミクスの変化が微小管-Wnt/PCPネットワークを制御し、細胞挿入・繊毛形成・配列保持といった細胞極性の形成に関与する可能性を考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
micro-CTによって非破壊的に全身骨格を撮影する事により、骨格形成に関する新たな表現型が確認でき、また、これまでの組織学的解析により得られた結果(脛骨・硬骨組織の表現型)を再検証する事ができた。 軟骨組織のカラム形成には、軟骨細胞の細胞極性:紡錘体軸・細胞挿入・繊毛形成・配列保持が必須であるが、こうした細胞極性を形成する軟骨細胞において微小管の配向性を観察する方法はこれまでに報告されていない。私共は様々な条件を検討し、免疫染色法によって微小管の配向性を観察する事に成功し、微小管とMap7D1の共染色によって、Map7D1の発現パターン・細胞内ダイナミクスが細胞極性に応じて変化する可能性を見出した。さらに、免疫染色法による解析結果に基づき、細胞極性に応じたMap7D1の発現パターン・細胞内ダイナミクスの変化を時空間的に解析すべく、ゲノム編集技術を活用してMap7d1-egfpノックインマウスを樹立した。すでに、ホモ個体が得られ、いくつかの組織を用いてGFP蛍光観察が可能である事を確認した。今後は器官培養下における蛍光ライブイメージングによる解析を実施する予定である。 さらに、微小管-Wnt/PCPネットワークの全体像を明らかにする試みとして、GFPノックインHeLa細胞由来の細胞抽出液を用いた免疫沈降-質量分析法によるプロテオミクス解析を実施し、微小管-Wnt/PCPネットワークに関わる候補分子を多数同定した。微小管-Wnt/PCPネットワークはHeLa細胞の前後極性の形成に関与して細胞運動を制御する。従って、HeLa細胞を用いて、細胞運動能を指標とした候補分子に対するsiRNAライブラリースクリーニングによって、微小管-Wnt/PCPネットワークに関わる分子を絞り込む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策を以下に列記するが、COVID-19の拡大による研究活動への影響のために、研究計画に変更の必要性が生じる可能性がある。 ① 骨格形成の表現型に関して、さらなる定量データを追加すべく、全身骨格標本を作製して、目的の骨組織の長さ等を測定する予定である。② Map7d1 KO胎仔が呈する軟骨組織・カラム形成の異常に関連して、その異常による増殖・分化状態への影響をCol2aやCol10aなどのマーカーに対する免疫染色法により解析する。③ Map7d1 KOによる微小管の配向性への影響を免疫染色法によって定量的に解析する。また、細胞形態をファロイジン染色により可視化し、細胞形態への影響を定量的に解析する。④ これまでの研究を踏まえ、Map7d1 KOによるWnt/PCP分子の局在化への影響を免疫染色法によって定量的に解析する。解析を行うにあたり、新たに抗体を作製したため、まずはその評価を行う。⑤ Map7d1-egfpノックインマウスより採取した軟骨組織を用いて、器官培養下における蛍光ライブイメージングによりMap7D1の発現パターン・細胞内ダイナミクスの変化を定量的に解析する。⑥ プロテオミクス解析により得られた微小管-Wnt/PCPネットワークの候補分子について、HeLa細胞を用いて細胞運動能を指標としたsiRNAライブラリースクリーニングによって、解析対象を絞り込む。
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Causes of Carryover |
3/13付でUniversity of Pennsylvaniaの研究グループより細胞株を発送していただく予定となっていたが、COVID-19によって先方の研究室が閉鎖となり、発送できない状況となった。従って、輸送などに係る金額分が残金として発生した。 先方の研究室が再開した後に発送していただく事になっているため、その費用に充てる予定である。
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