2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating the involvement of Microtubule-Wnt/PCP network in cartilage development
Project/Area Number |
19K06664
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
菊池 浩二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (70457290)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 微小管-Wnt/PCPネットワーク / Map7d1 / 骨格形成 / 細胞極性 / ゲノム編集 / GFPノックインマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
私共は培養細胞株・ショウジョウバエを用いた解析によって、細胞極性形成を制御する新たな分子メカニズム:微小管-Wnt/PCPネットワークを見出した(EMBO Rep., 2018.)。本研究では、その制御分子である微小管結合タンパク質:Map7、Map7D1に着目して、哺乳類動物の組織形成時における微小管-Wnt/PCPネットワークの機能を明らかにすべく、マウスを用いた解析を実施する。 Map7d1ノックアウト(KO)胎仔の表現型解析により、Map7D1が軟骨内骨化に関与する可能性、及び、組織切片を用いた免疫染色により、Map7D1の発現が前肥大軟骨細胞層で上昇する事を見出している。上記を踏まえ、Map7D1の発現パターン・細胞内ダイナミクスにより微小管-Wnt/PCPネットワークが調節され、軟骨細胞・細胞極性形成を制御して軟骨内骨化に関与すると想定している。そこで、他の組織との連関を排除して、軟骨細胞・細胞極性形成に特化して解析するために、軟骨細胞特異的にKOが可能となるCol11a2-CreER; Map7d1 floxマウスを樹立した。今後、当該マウスを用いて解析を行う。 さらに、ゲノム編集技術によりMap7 KOマウスを樹立した。これまでに報告されているジーントラップマウスの解析結果と同様に、Map7 KOマウスでは精子形成不全による雄性不妊が認められた。一方で、詳細な表現型解析により、Map7がセルトリ細胞の細胞極性を制御する可能性、及び、Map7-egfpノックインマウスを用いた解析により、Map7の局在パターンがセルトリ細胞の細胞極性に応じて変化する可能性を新たに見出した。そこで、Map7の細胞内ダイナミクスにより微小管-Wnt/PCPネットワークが調節されて、セルトリ細胞・細胞極性形成を制御する可能性を想定し、今後の解析を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軟骨細胞・細胞極性形成に特化して解析するために、軟骨細胞特異的にKOが可能となるCol11a2-CreER; Map7d1 floxマウスを新たに樹立した(floxマウス作製支援:AdAMS・熊大・荒木教授、Col11a2-CreERマウスの供与:京大・iPS研・妻木教授)。今後の解析には当該マウスを用いる予定である。 また、ゲノム編集技術によりMap7 KOマウスを樹立し(作製支援:ABiS・基生研・藤森教授)、微小管の配向性・F-actinの構造を免疫染色により精査したところ、Map7 KOによりセルトリ細胞の細胞極性が破綻する可能性を見出した。さらに、Map7-egfpノックインマウスを用いた解析により、Map7の局在パターンがセルトリ細胞の細胞極性に応じて変化する可能性を見出した事から、Map7の細胞内ダイナミクスとセルトリ細胞・細胞極性形成の連関を明らかにしたい。 私共はMap7とMap7D1を発現するHeLa細胞を用いた解析により、両者が微小管-Wnt/PCPネットワークにおいて機能重複する事を報告している(EMBO Rep., 2018.)。Map7 KO、及び、Map7d1 KOマウスの表現型解析により、個体レベルでは組織における発現パターンの違いにより組織形成への関与が異なると予想されたが、Map7とMap7D1の発現パターンを個体レベルで解析・比較した報告はこれまでにない。そこで、in situハイブリダイゼーション法によりmRNAレベルでMap7とMap7d1の発現パターンを比較した。マウスE11.5日胚を用いた解析の結果、両者の発現パターンが大きく異なる事を見出した。現在、Map7-egfp、及び、Map7d1-egfpノックインマウス由来のマウス胚を用いて、タンパク質レベルでの発現パターンの比較を試みている(技術支援:ABiS・基生研・藤森教授)。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策を以下に列記する。ただし、COVID-19による研究活動への影響のために、研究計画に変更の必要性が生じる可能性がある。 ① Col11a2-CreER; Map7d1 floxマウスを用いて、軟骨細胞のカラム形成、軟骨細胞の形態変化、細胞極性に関わる分子群、特に、Wnt/PCP分子群の局在変化などを解析する。② Map7d1-egfpノックインマウスより採取した軟骨組織を用いて、器官培養下における蛍光ライブイメージングによりMap7D1の発現パターン・細胞内ダイナミクスの変化を定量的に解析する。③ Map7D1がニューロンの細胞極性形成に関与する可能性を見出している。そこで、Map7d1 KOによる大脳皮質ニューロンの形態への影響を評価するために、Rosa26-CAG-LSL-tdTomato-WPRE; Map7d1 floxマウスを新たに樹立した。Creリコンビナーゼ発現ベクターを子宮内電気穿孔法により導入してモザイクにMap7d1をKOし、大脳皮質ニューロンの形態を解析する。また、細胞極性に関わる分子群、特に、Wnt/PCP分子群の局在変化などを解析する。④ Map7 KOマウスを用いて、セルトリ細胞における細胞極性に関わる分子群、特に、Wnt/PCP分子群の局在変化などを解析する。⑤ Map7-egfpノックインマウスより採取した精細管を用いて、器官培養下における蛍光ライブイメージングによりMap7の細胞内ダイナミクスを定量的に解析する。⑥ Map7とMap7D1の発現パターンを個体レベルで比較するために、Map7-egfp、及び、Map7d1-egfpノックインマウス由来のマウス胚を固定・透明化し、GFP蛍光観察によってタンパク質レベルで各組織の発現パターンを解析する。
|
Causes of Carryover |
University of Pennsylvaniaの研究グループより細胞株を発送していただく予定となっていたが、昨年度に引き続きCOVID-19の影響により発送できない状況にある。従って、輸送などに係る金額分が残金として発生した。次年度、発送が可能になった時にその費用に充てる予定である。 また、学会参加に係る旅費を計上していたが、COVID-19の影響により現地開催は軒並み中止となり、残金が発生した。次年度も引き続きCOVID-19の影響が懸念されるが、これまでの研究の進展に伴い残金は物品費に充てる予定である。
|