2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating the involvement of Microtubule-Wnt/PCP network in cartilage development
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19K06664
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
菊池 浩二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (70457290)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 微小管-Wnt/PCPネットワーク / Map7d1 / 内軟骨性骨化 / 細胞極性 / ゲノム編集 / GFPノックインマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
私共は培養細胞株・ショウジョウバエを用いた解析により、細胞極性形成を制御する新たな分子メカニズム:微小管-Wnt/PCPネットワークを見出した(EMBO Rep., 2018.)。本研究では、その制御分子である微小管結合タンパク質:Map7、Map7D1に着目して、哺乳類動物の組織形成時における微小管-Wnt/PCPネットワークの機能を明らかにすべく、マウスを用いた解析を実施する。 HeLa細胞を用いた解析により、Map7とMap7D1が機能重複した事から、まず始めにin situハイブリダイゼーション法によりmRNAレベルでMap7とMap7d1の発現パターンをマウス胎仔において解析し、器官・組織における発現の違いを比較した。その結果、マウス胎仔における両者の発現パターンは大きく異なり、また、発現パターンの違いに一致して、Map7ノックアウト(KO)及びMap7d1変異マウスが異なる表現型を示す事を見出した。ゲノム編集技術により樹立したMap7 KOマウスは、過去に報告されたジーントラップマウスの解析結果と同様に、精子形成不全による雄性不妊が認められた。一方で、Map7d1変異マウスは周産期致死となり、胎仔の表現型解析によって、Map7D1が内軟骨性骨化に関与する可能性を見出した。以降は、Map7D1の発現パターン・細胞内ダイナミクスにより微小管-Wnt/PCPネットワークが調節され、軟骨細胞・細胞極性形成を制御して内軟骨性骨化に関与すると想定して研究を進行した。他の組織との連関を排除して軟骨細胞・細胞極性形成に特化して解析すべく、軟骨細胞特異的にKOが可能となるCol11a2-CreER; Map7d1 floxマウスを作製し、また、Map7D1の発現パターン・細胞内ダイナミクスをMap7d1-egfpノックインマウスを用いて解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Map7D1のC末端側を欠失した変異マウスを用いた表現型解析により、Map7D1が軟骨細胞の極性形成を制御する可能性を見出した。そこで、軟骨組織・細胞におけるMap7D1の機能を正確に理解するために、タモキシフェン投与により軟骨細胞特異的にMap7d1遺伝子を欠損できるCre-LoxPコンディショナルノックアウト(cKO)マウス:Col11a2-CreER; Map7d1 floxを作製した。Map7d1変異マウスと類似して、Map7d1 cKOマウスは骨格の発育不全を呈した。しかし、個体間で組換え効率に大きなばらつきがあったため、新たなMap7d1 floxマウスを設計し、再作製を行っている。 本研究から派生して、マウス神経芽細胞腫N1-E115細胞を用いた解析により、Map7D1が微小管の安定化に関わるチューブリンアセチル化の維持に関与して細胞運動や神経突起伸長を制御する事を新たに発見した。さらに、同じファミリーに属するMap7D2は微小管に結合して直接的に安定化して細胞運動や神経突起伸長を制御した事から、ファミリー間で機能のダイバーシティが存在する事を明らかにした。本研究成果はLife Sci. Allianceで公表予定である(4/25、オンライン公開)。 また、Map7 KOマウスが呈する精子形成不全による雄性不妊について、その原因を分子レベルで解明すべく解析を進めた。Map7 KOマウスやMap7-egfpノックインマウスを用いた解析によって、Map7がセルトリ細胞の微小管の配向性を制御する事により、セルトリ細胞の細胞極性形成・維持を制御してセルトリ細胞と精細胞の接着に必要な分子群の局在化に必須である可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策を以下に列記する。 ① マウス胎仔におけるMap7とMap7D1のタンパク質レベルでの発現パターンを比較するために、Map7-egfp、及び、Map7d1-egfpノックインマウス由来のマウス胚を固定・透明化し、GFP蛍光観察によって解析する。② 再作製中であるMap7d1 flox マウスを用いてCol11a2-CreER; Map7d1 floxマウスを樹立し、軟骨細胞のカラム形成、軟骨細胞の形態変化、細胞極性に関わる分子群、特に、Wnt/PCP分子群の局在変化などを解析する。③ Map7d1-egfpノックインマウスより採取した軟骨組織を用いて、器官培養下における蛍光ライブイメージングによりMap7D1の発現パターン・細胞内ダイナミクスの変化を定量的に解析する。④ Life Sci. Allianceで公表予定の研究成果から、Map7D1がニューロンの細胞極性形成に関与する可能性を見出している。そこで、Map7d1 KOによる大脳皮質ニューロンの形態への影響を評価するために、Rosa26-CAG-LSL-tdTomato-WPRE; Map7d1 floxマウスを樹立する。Creリコンビナーゼ発現ベクターを子宮内電気穿孔法により導入してモザイクにMap7d1をKOし、大脳皮質ニューロンの形態を解析する。また、細胞極性に関わる分子群、特に、Wnt/PCP分子群の局在変化などを解析する。⑤ Map7 KOマウスを用いて、セルトリ細胞における細胞極性に関わる分子群、特に、Wnt/PCP分子群の局在変化などを解析する。⑥ Map7-egfpノックインマウスより採取した精細管を用いて、器官培養下における蛍光ライブイメージングによりMap7の細胞内ダイナミクスを定量的に解析する。
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Causes of Carryover |
論文掲載料として確保していた分が次年度使用額として生じた。 4/25にLife Sci. Allianceにてオンライン公開される論文の掲載料として使用する予定である。
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