2020 Fiscal Year Research-status Report
白色脂肪細胞での脂肪蓄積制御機構とその破綻による脂肪肝、2型糖尿病発症機構の解明
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19K06665
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
竹中 延之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20610504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 孝哉 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20251655)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Rac1 / 白色脂肪細胞 / インスリン / 脂肪酸 / 糖尿病 / 細胞内シグナル伝達 / 肥満 / 異所性脂肪蓄積 |
Outline of Annual Research Achievements |
白色脂肪細胞にインスリンが作用すると、インスリン応答性の脂肪酸取り込みシグナル伝達系が活性化され、脂肪酸輸送担体FATP1やCD36が細胞膜へ移行・露出し、脂肪酸が取り込まれる。2020年度は、マウス白色脂肪組織を用いたex vivo系にて脂肪酸取り込みシグナル伝達系へのRac1の関与について検討を行った。まず、FATP1およびCD36の細胞膜移行を可視化する新規手法を開発し、白色脂肪細胞でのインスリン応答性脂肪酸取り込みシグナル伝達機構へのRac1の関与について検討したところ、野生型マウス由来の白色脂肪細胞では、インスリン刺激により、FATP1ならびにCD36の細胞膜移行の誘導が認められたが、adipo-rac1-KOマウス由来の白色脂肪細胞では、これらの細胞膜移行が完全に抑制された。次に、マウス白色脂肪組織を用いて、インスリン刺激による脂肪酸取込みへのRac1欠損の影響を検討した。その結果、野生型マウス由来の白色脂肪細胞では、インスリン刺激による脂肪酸取り込み量の増加が認められたが、脂肪細胞特異的rac1ノックアウト(adipo-rac1-KO)マウス由来の白色脂肪組織では、増加は認められなかった。これらのことから、白色脂肪細胞におけるインスリン応答性の脂肪酸取込みにRac1が関与し、Rac1を介した新たな脂肪酸取込みシグナル伝達系が存在する可能性が示唆された。次に、各種マウスの白色脂肪組織の組織学的解析を行ったところ、adipo-rac1-KOマウスの白色脂肪組織において、白色脂肪細胞の小型化、マクロファージの浸潤数の増加、線維化が認められた。これらのことから、白色脂肪細胞でのRac1欠損による脂肪酸取込みの阻害が、白色脂肪細胞の小型化の一因である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究実施計画に基づいた解析により、Rac1の新たな機能を見出すことができた。また、マウス白色脂肪組織を用いたRac1を介した脂肪酸取込みシグナル伝達系の解析に有用なツールの開発も終了したことから、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス白色脂肪組織を用いて、Rac1を介したインスリン応答性の脂肪酸取込みシグナル伝達経路ならびに中性脂肪蓄積機構の解明を推進する。また、adipo-rac1-KOマウスと肥満モデルマウスob/obマウスとの交配により創出した脂肪細胞特異的rac1欠損ob/obマウスを用いた解析を推進し、脂肪細胞でのRac1欠損による全身への糖脂質代謝への影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
想定していた旅費の支出がなくなり、その分を物品購入に充当したが残額が生じた。 使用計画としては、次年度の物品費に充当する予定である。
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