2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K06668
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
鎌田 芳彰 基礎生物学研究所, 多様性生物学研究室, 助教 (20291891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 彰 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (10272692)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞応答 / アミノ酸 / トア複合体 / 酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において、私はアミノ酸センシングの中枢であるプロテインキナーゼ、トア複合体1(TORC1)がアミノ酸情報を感知し活性制御を受ける分子メカニズムの解明を目標に研究を行っている。特に、本研究の最大の目的は、現在提唱しているtRNAをアミノ酸飢餓シグナルとした新規TORC1制御モデルの検証である。 申請書に記したように、私はTor1のFRBドメインがtRNAと結合することを見出した。FRBドメインはTORC1の阻害剤rapamycinが結合する部位として知られる。よって、tRNAはrapamycinと同様の作用機作によりTORC1キナーゼ活性をブロックしていることが示唆された。 今年度は、tRNAとFRBドメインの結合様式の研究を行った。(1) 精製したリコンビナントタンパク質を用いて、ゲルシフトアッセイを行った結果、tRNA-FRB結合はrapamycinにより競合阻害を受けることが明らかになり、また(2) tRNA-FRB結合の構造生物学的解析(NMR, 微生物化学研究所・野田展生博士との共同研究)によりtRNAはrapamycin とFRBのほぼ同等の場所に結合すること、tRNAとの結合に必要なFRB内アミノ酸残基も判明した。これにより、上記の仮説、tRNAはrapamycinと同様の作用機作によりTORC1キナーゼ活性をブロックしていることの証明に大きく前進した。また、哺乳動物FRBをもちいた実験においても上記の結果が追試できたため、tRNAによるTORC1制御機構が真核生物に広く保存されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造生物的解析では、tRNAとFRBドメインの結合能が予想以上に弱く、結晶ができず、結晶構造解析には至らなかったものの、NMRによる解析に成功した。これまでゲルシフトアッセイの実験結果しか得られなかったが、これにより複数の実験によるサポートを得て、本研究の目的である仮説の証明へ順調に進んでいると言える。一方当初予定していた細胞内アミノ酸動態の解析は、当研究所の機器に問題が出て、一旦中止を余儀なくされた。代わって、TORC1によるタンパク質翻訳開始の制御について解析を行う事とした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) TorFRBドメインとtRNAとの結合に関しては、in vitro mutagenesis法を用いて、tRNAとの結合能を失ったFRB変異体を作製する。また、それを用いてIn vitroアッセイを経て、in vivoでの細胞の表現型(特にアミノ酸環境変化に対する応答)を観察する。 (2)等温滴定カロリメトリー(iTC200)を使用して、両者の解離定数を測定し(微生物化学研究所・野田展生博士との共同研究)、また(3) 変異体TORC1のin vitroプロテインキナーゼ活性の測定も予定している。しかしながら、新コロナウイルス禍による影響により、これらの実験を進められるかどうかは未定としか言いようがないのが、現状である(特に(2)(3))。
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